ハードとしての確実な家作り:実践編 

20.ガラス工事 21.板金工事 22.塗装工事

20.ガラス工事

 建具には、ガラスが付きものです。木製の建具にしてもアルミサッシにしても、ガラスを入れないことは考えられません。そのガラスですが、大きく分けると6種類あります。

1.透明ガラス(摺りガラス)
2.型ガラス
3.網入り透明ガラス(線入り透明ガラス)
4.網入り型ガラス
5.化粧ガラス
6.復層ガラス

 透明ガラスが一番よく使われます。厚さもいろいろあり、2、3、4、5、6、8、10ミリとあり、住宅で使われるのは、2〜5ミリくらいまでです。大きな面積の建具であれば、当然のことに、厚いガラスが必要です。80×180センチの建具にはいるガラスで5ミリですから、ふつうはそれ以下の厚さのガラスを使いますが、注意するのは建具との調整です。5ミリのガラスを入れるには、5ミリの溝が突かれている必要があります。また、幅広の溝に、薄いガラスを入れると、建具を開閉するたびにカタカタと音がしてしまいます。ですから、建具とガラスの厚さは、建具表という図面にはっきりと記載します。

 昔は、外部に面した木製建具のガラスをとめるのに、細釘とパテでとめました。しかし、今では外部にアルミサッシを使うことが多くなったので、モールやゴムのパッキン(=ガスケットとも言う)でとめるのが多いようです。

 内部の木製建具であれば、押し縁(5ミリ角くらいの細い棒)でとめる例が多いようですが、匠研究室では建具の上から落とし込みにします。こうすると、ガラスを入れたところが目だたずに、きれいです。ただし、これは場合によっては、建具をはずさないと、ガラスが入らないことがあるので、施工者は敬遠したいようです。

 透明ガラスをもとに、摺りガラスといって、表面をサンドブラスト加工したものがあります。摺りガラスは、別名クモリガラスとも言い、透明ではありません。ガラスの途中まで摺り加工することもでき、上半分を透明、下半分を摺りにもできます。

 型ガラスとは、表面に凸凹した模様があるもので、かすかに向こうが見えます。模様にはいろいろな種類があって、それによって半透明になったり、まったく見えなくなったりします。型ガラスは、2.2、4、6ミリの三種類だけで、しかも、模様の種類によって、厚さが違います。

 透明ガラス、型ガラスともに、4ミリ厚で1平方メートルあたり、4、000〜5、000円くらいです。しかし、ガラスは厚さによって定尺寸法が異なっていますので、同じ厚さでも、ガラスのサイズによって値段が違ってきます。ガラスは、旭ガラス、日本板ガラス、セントラルガラスの三社でほとんど独占されていますので、カタログから値段を調べるのは、そんなに難しくありません。

 網入りガラスは、割れにくく、しかも割れても破片が飛び散らないことから、外部に使われることが多いようです。とりわけ、都市部では、隣地に面した開口部には、乙種防火戸といってこの網入りガラスを使うことが、義務つけられています。網入りガラスは、透明と型ガラスでは値段が非常に違います。透明のほうが高く19、000円/m2くらいで、型ガラスは9、000円/m2くらいです。

 線入りガラスも、その目的は同じで、割れにくさにありますが、割れ難さでは網入りのほうが上です。そのため最近では、線入りガラスは、乙種防火戸とは認められません。網入り、線入りともに、厚さは6.8ミリの一種類だけです。

 ガラスの中には入っていると入っても、網や線は金属ですから錆びます。特にガラスの切断面に、網や線が顔を出していますから、ここから錆びやすく、錆びると金属が膨らんでガラスを割ります。ですから錆びないように、サッシに入る下のほうには、防錆塗料を塗っておきます。またまれに、ガラスと金属の熱膨張率が違うことから、炎天下では熱割れをおこすことがあります。特に、ガラスにフィルムを張ると、熱割れしやすいようです。

 5に分類した化粧ガラスという言葉はありません。しかし、1〜4以外にも、さまざまな模様の入った、きれいなガラスがたくさん市販されています。これらを一括して総称する名前はありません。それぞれに、新しい名前をつけて、市販されています。これらのすべてに言及することは不可能ですから、化粧ガラスと総称しました。こうしたガラスは高価ですから、予算に応じて、ケースバイケースと言うことになります。それぞれカタログやカットサンプルを取り寄せて、決定します。ただし、きれいなガラスほど日光に弱いので、外部には使えないことが多いようです。カタログを必ず確認するべきでしょう。

 最近ではペアーガラスと呼ばれる2重になった復層ガラスが使われるようになりました。これは高価ではありますが、断熱性や遮音性に優れ、断熱サッシなどには好んで使われます。3−7−5と言ったように、両側の数字がガラスの厚さを表し、真ん中の数字は空気層の厚さを表します。この空気層は真空とはいきませんが、減圧してあります。 


21.板金工事

 屋根工事のところにも、板金工事がありましたが、屋根工事は部位別の分類で、工種別の分類ではありません。本来は、どちらかに統一すべきなのでしょうが、それがなかなか難しいのです。ここでは、板金屋が行う工事でも、屋根工事以外の板金工事を述べます。

 板金工事としてまず目につくのは、樋工事です。屋根やひさしの流れ尻についている半円形のあれです。最近では、板金工事とは言いながら、樋は金物ではなく、プラスチックになっていますが、今までの習慣で板金屋があつかっています。もちろん、お寺や高級住宅では、銅板を使用することもありますが、それも減ってきました。銅板を現場加工して樋を作らせるのは、困難な仕事になってきます。(既製品の銅製樋もある)そして、亜鉛メッキ鉄板を現場加工して、樋を作ることは絶えてなくなりました。匠研究室でも、一般住宅ではプラスチック製の樋を使用している昨今です。

 プラスチック製の樋には欠点がありません。錆びないし、安価だし、加工は簡単だし、まったく良いことずくめです。プラスチックの欠点とされる貧弱な質感については、樋のつく位置を思いだせば、なんら気にならないことに気づかれるでしょう。地上から4〜7メートルもはなれた、手のととどかない遠くに付くのですから、色が識別される程度で、質感まではとても判らないのです。プラスチックの樋は、工場でそれらしい色に加工されてきますから、現場塗装の必要はありません。

 しばしば古いものに懐古の情を示す匠研究室も、樋についてだけは、プラスチックに無条件で賛成します。多くの場合、プラスチックは何かのまがい品として作られますが、樋については、亜鉛メッキ鉄板の代替品として考えることは間違いです。プラスチックの特性が、樋という用途にピッタリと適合したのであって、むしろ、亜鉛メッキ鉄板こそプラスチック製の樋が登場するまでの、つなぎ役だったと言っても過言ではありません。

 
樋の部分

 樋は、横引部分=軒樋と、縦引部分=縦樋からできています。そして軒樋と縦樋の接合部をアンコウと呼んでいます。アンコウのつるし切りと言うあの姿と、似ているところからでた名前だそうです。軒樋は半円形が良く使用され、半径105〜150までが常備品であります。大きな屋根には流水量が多いので、大きい樋をつけるのは言うまでもありません。半円形でのみきれない時は、同じ巾でも流量の多い角樋とします。

 縦樋も多くは丸型で直径60ミリが標準で、120ミリまであります。縦樋にも角物もありますが、角樋は少々ゴツイ感じがします。ただし値段は角樋の方が高く、高級品と呼ばれています。値段は、105の半丸の軒樋、60の丸の縦樋で、共に材工ともで¥2、500/mくらいでしょう。

 樋は、つける場所によって、二つの考え方があります。まず、本当に雨をとるだけならば、これ以降に述べるように、がっちりと大きな樋をつけます。しかし、玄関先のように、そのすぐ下を人がとおり、その樋が良く見える場合は例外です。つまり、樋をつける目的が違うのです。こうしたところにつく樋は、大雨の時ではなしに、小雨の時に役立つように設けるのです。

 大雨のときは誰でも雨に濡れることを嫌って、慎重に傘をさします。この時は、誰も樋をあてにしてはいません。しかし、小雨の時は、必ずしも傘をさすとは限りません。このとき軒先から滴がたれないように、樋をかけるのです。そのために、小さな樋でかまわないのです。また、この時は樋は水平にかけるほうがいいでしょう。というのは、樋は水平につけても、水の量が多くなれば、自然と流れるからです。しかも、水平な屋根庇の先端に、水勾配がついた樋をつけることは、水平線が崩れることで、軒先が見苦しくなってしまいます。

 軒先につける軒樋の固定方法には、二通りあります。面付けと打ちこみですが、これは打ちこみをすすめます。匠研究室では、特別の事情がない限り、打ちこみを標準仕様としています。面付けはどうしても下がりやすく、また水平をとるのも難しいようです。

 雨水が流れるだけだから、樋が下がるなんてことはない、と思うかも知れませんが、冬の雪でやられてしまいます。屋根に雪止めがついていればまだしも、ついていなければ、雪の重さは全て樋にかかってしまいます。雪がとけるまでそのままですから、大ていの樋は下がってしまうわけです。

 雪にも敗けない樋のつくり方はありません。樋をもっと丈夫な箱にして、屋根や軒先と一体化してしまう方法もありはしますが、匠研究室はすすめません。箱樋とか内樋と呼ばれるこの方式にしたから、手入不用かと言うと、そんなことはありません。また内樋にしたから、建て主は手入れをマメにするか、と言うと残念ながらそんなこともありません。すると屋根と一体化しているため、樋が痛んだ時は屋根も痛んでいて、気づいたときは大修理という次第です。もちろん設計者としては、軒先の線がくずれる樋なんぞ隠したいところですが、何とか樋自体で美しくみせる工夫をすべきでしょう。そして、樋は定期点検によって維持すべき部分と考える方が良いようです。

 そこで雪でも大丈夫だろう樋のつり方です。軒樋の受け金物は、450以内に一つとし垂木に打ちこむこと。そして、軒樋から縦樋のへのつなぎは、ガッチリと固定しないこと。ただし、縦樋はでんでんと呼ぶ金物を1メートルに一つぐらい使って、しっかりと固定すること。つまり、雪によって下がるのは軒樋だけですから、その下がりを縦樋に影響させない工夫は必要でしょう。それが、軒樋と縦樋のゆるい固定であるわけです。

 樋は雨水を受けるものですが、受けただけでなく地上の決まったところまで,雨水を流してくれなくては困ります。ところが、何せ高いところにあって、手入れが届きにくいものです。多くの家は樋に木の葉などがつまり、流れが悪くなっているのは、残念ながら事実のようです。

 つまった樋は困りものです。樋がなければ軒先には雨水があふれかえらないものを、つまった樋があるため、かえって軒先にとっては過酷な状態になっている例を見かけます。樋をつけないほうが良いのかというと、本当はそうしたいところなのですが、それもできません。

 
樋は付けたくない
 お寺のように単純な屋根で、しかも平家で軒の出が深い場合なら、樋はつけません。雨水を軒先でとらず、そのまま地上までおとします。地面の雨落ち部に、側溝を掘って、ここで排水を処理します。この方式が建物のためには最も良いのですが、一般の住宅では軒もそうは深くだせませんし、まず何よりも屋根の形が複雑で、側溝式では対処しきれません。そこでどうしても、樋をつけることになってしまいます。つまり、こうした背景から考えられることは、都市型の密集住宅になってから、樋の必要性は高まったということです。
二階建ての雨仕舞い
 モルタル塗りが登場するまでは、二階建住宅の雨仕舞(あまじまい)は大仕事で、原理的に不可能ではないまでも、きわめて困難でした。とりわけ、一階と二階のつなぎ目の部分の雨仕舞は、困難をきわめました。一階の柱の上には、胴差しと呼ばれる水平材がのります。そして、この胴差しの上に二階の柱がたつのですが、柱と壁のきわの防水が不可能だったのです。それが、モルタル塗りの登場により、柱の外側に外壁をつけることができて、二階建でも完璧の雨仕舞ができるようになりました

 樋をつけるなら樋づまりを防ぐために、樋の上に網をつけることも考えられるのですが、今度は網の部分に木の葉がたまったりして、もっと始末におえなくなります。樋づまりの対策は、残念ながら毎年一度〜二度の定期点検、今のところこれ以外の方法はないようです。

 樋工事は地上部分で終わりです。樋がそのまま地中へと伸びていくと、そこから先は水道屋の工事範囲となります。たとえ同じ配管材料を使用しようとも、地上は板金屋、地中は水道屋と分かれています。

 軒樋から縦樋へ流れた雨水は、地上に導かれて、その先はどこへ行くのでしょう。今までは地上に放免されて、垂れ流しとなっていましたが、やはり地下の下水道まで結んでやるべきでしょう。そのための工事費もかかりますが、地面はなるべく乾燥させた方が良く、大量の雨水を一カ所に解放するのは、好ましいことではありません。屋根の形が複雑だと、縦樋の本数も多くなり、それを受ける地中の排水管もたくさん用意せねばならず、なかなか大変です。

 今まで、なんのことわりもなく、亜鉛メッキ鉄板という言葉を使ってきました。しかし、金属の薄板はいろいろな種類があります。その中でも比較的安価で、私たちがよく目にする鉄板には、二種類あります。それはトタンとブリキです。トタンとは鉄板を亜鉛メッキしたもので、ブリキは鉄板をスズメッキしたものです。このうち建築で使用するのは、圧倒的にトタン、つまり亜鉛メッキ鉄板です。しかも通常は0.25ミリのものです。そのほかに板金屋があつかう金属板は、銅板、ステンレス板などがありますが、両者ともに高価ですが、ステンレスは錆びにくいため、最近では良く使われます。

 屋根と樋以外にも、板金工事はあります。板金工事の隠れたしかも重大な働きは、やはり雨水の浸入を防ぐことです。トタン板のなかった時代は、雨水の侵入を防ぐため、軒を深くだしたり、侵入しても大事に至らない工夫をしたり、大変な苦労をしていました。ところが、外壁がモルタルで塗りこめられた大壁になると、以前までの工作では、雨対策が決定的に不足してきました。セメントを生みだした近代工業は、ちょうどその時、トタン板をも大量生産しはじめていました。そこでトタン板が住宅にもとり入れられてきました。

 
雨の浸入と水切り

 モルタル塗の弱点は開口部まわりです。アルミサッシですと、水切金物がセットになっているはずですが、木製建具ではそうはいきません。枠と外壁がドンとぶつかり、このままでは点線の如く雨水の侵入を許してしまいます。モルタルの下の防水紙では、この間隙をうめることはできません。とりわけ、風をともなった雨は始末が悪く、小さなスキ間から容赦なく侵入してきます。

 こうした箇所は実に多く、窓という窓すべてにこの問題は発生しますし、他にも外壁に何かがとりつく部分(たとえば、換気扇の枠など)には、すべて同じ問題が発生します。そこで、左図の下のように折曲げた水切りと称するトタン板(カミソリともいう)を、枠とモルタルの間に、はさみこみます。すると、雨は点線のように流れてくれて、室内には侵入しないと言うわけです。

 記述の順序が逆になりましたが、水切金物のとりつけは、当然のことながら左官工事の前です。しかも、防水紙の下になるように、とりつけることは言うまでもありません。毛細管現象を防ぐ上でも、防水紙と水切金物の重なりは、最低でも10センチは欲しいところです。

 今日、アルミサッシが主流になり、雨仕舞が簡単になったため、つい甘くみて、水切金物の設置を忘れると、てきめんに雨もりとなってしまうのは、現代の雨でもまったく同じです。戸袋の上、霧除ひさしの上、出窓の上、二階の壁と一階の屋根の接線、ベランダの壁ぎわ…こうした部分には、充分に水切金物を張って、完璧な雨仕舞を目ざしたいものです。

 水切り金物を設置しても、そこが雨対策上の弱点であることは変わりありません。ですから複雑な形の屋根や、凹凸の多い外壁にすると雨がもりやすく、単純な外観はその恐れが少ないこともお判りでしょう。また新しい試みは、雨仕舞の定石がないため、雨漏りにつながり易いのは、理解して頂けると思います。ですから最近はやりのバルコニーやトップライトなどは、漏水につながり易く、慎重を要するところです。これは施工だけの問題ではなく、設計段階で対処すべき問題です。

 実際に現場での話、板金工事のチェックはどうすれば良いのでしょう。まず、トタン板の厚さですが、これは信用するしかありません。マイクロメーターがあれば別ですが、0.4ミリと指定して0.35ミリを使用されたら、触っただけで見抜くのは、本当のところ難しいものです。

 職人たちはいつもと違う仕事を嫌いますから、馴染みのない0.5ミリと指定してそれを実際に使用させるのは、単に予算の問題としてだけでなく難しいことです。錆びることを考えると厚ければ厚いほど有利ですから、設計者は予算の許す限り厚いものを指定します。板厚がませば、はさみは切れない、折るのは大変、残材は他では使えないので無駄になるなどなど。職人たちはいつも使っている0.25ミリを使用したがります。このあたりも、設計者の眼力と職人の仕事との、花火散るかけひきといったところでしょうか。

 次に水切りの巾です。立ち上がりは10センチと言いました。水平部分と下がり部分は、それぞれの部位によって、つまり何にかぶせるかで決まってしまいますから、問題はありません。気をつけて欲しいのは長さです。長い方がかっこ良いとばかりに、長くすべきではありません。何故なら、水切りとモルタルが接する部分で、支障がおきるからです。

 
設計監理者の目
 全体を見る、これは設計監理者にいつも要求されている態度で、他の職人にはないことです。職人が全体を見ていては仕事になりません。左官屋は壁だけに執着してくれれば良いのであって、板金屋の仕事まで判る必要はありません。設計監理者だけが唯一全体を見る人間だから、職人の意志に反したことを指示しても許されます。熱中してくると、つい全体が見えなくなってしまい易いものです。部分に執着しても、同時にいつも全体を見続ける姿勢は、設計監理者に不可欠の条件でしょう。

 モルタルは動かないのに対して、鉄は伸縮します。夏は伸び、冬は縮という当たり前を忘れてしまうと、鉄の伸縮が、モルタルを引っ張って、壁の剥離へとつながってしまいます。ですから、鉄の伸縮がモルタルに影響を与えない範囲の長さ、つまり1メートル内外の長さにしておくべきです。板金屋はめんどうがっても、1メートル以内ごとに継手を設けるべきです。

 職人衆は、自分の仕事には責任をもち、自信を持っていますが、他の職域には案外と暗いものです。ですから、職域際のスリ合わせは、どうしても設計者の役割になります。ここでも、次の工程がモルタルだとすれば、水切り金物は短くつなぐと指示しなければなりません。何故なら、外壁がモルタル以外のものなら、この配慮は不用だからなのです。いやむしろ、継手は雨仕舞の弱点でこそあれ、長所ではありませんから、水切金物は長くしたいところです。ですから、外壁の仕様によって指示を変える必要があるのです。

 建物の内部においても、板金工事は少しあります。それは、厨房のガスコンロの前です。ガスコンロの前は、耐熱・耐火のため、そして掃除のしやすいために、タイルかステンレスが使われます。使い勝手だけでみれば、ステンレスが圧倒的に優れています。コンロの前のステンレス貼りは、材工共で12、000〜15、000円/uくらいでしょうか。厨房のレンジフードは雑工事で詳述しますが、匠研究室では既成のレンジフードを使わずに、有圧換気扇を使った排気をしています。これは板金工事です。


22.塗装工事

 塗装。これも建築工事のなかでは、大切な職種です。もちろん塗装というのは、塗料を塗ることですが、建物に塗装するのは、建築という特殊な分野の作業かも知れません。つまり塗装は、ピアノや自動車などにもされるからです。そうした塗装は、建築とは別のものと、考えてもよいくらいに違います。他の塗装が5層も6層も、ピアノにいたっては15層も塗るのにくらべると、建築のはずっと単純な工程です。

 建築塗装は、塗る対象物が大きいので、それによる制約がいろいろとでてきます。とりわけ外部の塗装は、塗料を塗るだけで済んでもらいたいものです。たとえば、焼き付け塗装のような処理はできませんし、塗ったあとを研くなどという塗料も困ります。建築の塗装では塗ったら塗りっぱなし、というのでないと困るのです。

 建物は雨曝しになっていますから、塗装するタイミングを上手く捕まえるのは、なかなか大変なのです。しかも、濡れた下地には塗装できませんから、雨上がりの直後には塗装できません。それを3回も4回も確保するとなると、他の職種にも影響がでかねないからです。塗装一般にいえることですが、湿度の低い日に施工すると、きれいに上がります。

 塗装する職人のことを、通称ペンキ屋と言います。塗料にはいくつも種類があるのに、ペンキを塗る場合が多かったので、ペンキ屋と言うようになったのでしょうか。それはさておき、いつものことですが、塗装も下地がなければ始まりませんから、まず、下地のことから話を進めることにしましょう。

 左官屋の塗り壁に比べて、クロスのほうが、下地の施工精度は厳しいものが要求されるといいました。ところが、塗装下地の施工精度は、クロス以上に厳しいものが要求されます。塗料は液体ですから、当然のこととして、下地の形にしたがっていきます。凹凸があれば、あったなりに着色されていきます。

 塗装することによって、凹凸が隠れることはありません。むしろ、塗料の種類によっては、凹凸をいっそう目立せさえします。ですから平滑で均質な塗面を実現したいとしたら、下地処理に塗装工事の80パーセントくらいのエネルギーを投じるべきです。そのくらい、下地は大切です。塗面に塗料をのせる時は、すでに塗面は仕上がっている、というくらいにしたいものです。そのためには、下地を作るときから、ここは塗装で仕上げるというのが、徹底的に意識されている必要があります。

 
塗装工事は付け足し?
 木造の建築界では、塗装という職種は、どうも付け足しという感じがあります。私たちの感覚は、その物の質感を直接に愛でることを好むらしく、塗料をかけてしまうと、何か汚された感じがするのでしょうか。腕のよい大工で、木に愛着が深ければ深いほど、白木の木肌を大切にしたがるようです。
 木造建築のなかでは、塗装という工種は大切であるにもかかわらず、なかなか確立された技術としては、扱われないように感じます。大工の長である棟梁も、塗装工にたいしては案外に冷淡で、とにかく色が着いていれば良い、という態度すらみせることあります。しかし、塗装の性格からして、塗料がのるときはすでに結果が見えているといっても過言ではありません。塗装の仕上がりは、下地作りに尽きると、もう一度確認しておきます。

 建物の内部と外部に別けて、話を進めていきましょう。まず、内部ですが、木部にはふつう、塗の粉(とのこ)が塗られています。しかし、これは塗装工によって塗られるのではなく、下ごしらえ(木工事 その3参照)をした直後、大工の手によって塗られます。塗の粉は、それ自身をみせるためではなく、木肌の保護のために塗られます。つまり、建築中に素手でさわられると、手の油がついて汚れるので、それを防ぐために塗られるものです。ですから、完成時には拭きとってしまいます。けれども、木は一度塗るとその成分は、繊維細胞のなかに浸透してしまいます。ですから、塗の粉も完全に拭きとるのは難しく、養生さえ完璧にできるのなら、塗の粉は使いたくないものです。また、拭き取りが不完全だと、半年後くらいになって、塗の粉がスジ模様となって、浮き出てきもしますから。

 塗料の種類によって、二つの塗装方法があります。一つは塗膜(とまく)を作る方法で、もう一つは木の表面を染める方法です。前者の多くは下地を隠してしまい、塗料それ自体を楽しむものです。塗料が透明の場合は、木地が見えますが、表面に塗膜ができていますから、木と空気は触れません。長年たつと、塗膜の接着力はだんだん衰えて、塗膜は剥がれやすくなってきますが、そうなる前に塗重ねを繰り返して、塗膜を厚くしていきます。

 塗装の本場、アメリカでは専ら塗膜を作る塗り方です。何年にもわたって塗装に塗装を繰り返し、下地が何であったか分からないくらいに、厚く塗膜をつくります。こうなると、塗料の本領が発揮されてきて、実に深みをもった貫禄のある仕上げとなってきます。日曜大工の盛んなアメリカでは、一家の主によっても、気軽にペンキ塗りが繰り返し行われています。

 敗戦後、日本を占領したアメリカ軍が、日本家屋の室内をペンキで塗りたくり、日本人は眉をしかめました。そうした思い出があるせいか、また、最近の日本人は家の手入れをまめにしなくなったせいか、ペンキ仕上げを軽く見ているよです。しかし、塗装の質とは、塗料その物の質よりも何回塗ったかにある、といっても過言ではありません。

 建築塗装は、一回か二回塗りで仕上がらないと困る、前述しました。しかし、本当のことを言えば、新築時の塗装では、塗料本来の性能はでていないのです。何度も何度も塗り重ねることが、塗装本来の姿で、ピアノ塗装にしろ、自動車塗装にしろ、良い物は必ず何重にも塗られています。建築塗装が、一度の塗りっぱなしで許されているのは、塗面それ自体を楽しむのではなしに、下地の保護とせいぜい表面の色を楽しむだけだからでしょう。日本でも、塗面の質感などが評価の対象になってくれば、建築塗装ももう少し高級な仕上げになってくるかも知れません。

 塗装材料、つまり塗料は安い物です。塗装の質感は、何度塗り重ねたかによりますから、充実感ある塗装は、つまるところ手間のかけかたです。高価な塗料を使ったかではなく、何回塗ったか=どのくらいの人手がかかっているか、これが塗装の価値です。建築塗装の歴史のない日本では、塗料を塗ることの意味が違うようにとらえられています。何度も塗るという手間を嫌い、まさに食わず嫌いという状態で、塗装はクロスに侵食されています。

 塗装に限らず、長年にわたって、手入れされることによって、本来の性能を発揮する材料は、近年だんだんと廃れています。10年後には、上品で貫禄をもった建物になっています。しかし、新築の今は質素です。これでは建築主は、なかなか納得しないでしょう。しかもその間、不断の手入れが必要とあっては、よけいに歓迎されません。いくら匠研究室だとしても、完成引き渡しのときに、あまり見栄えのしない材料は、使いにくいものです。その上、毎年ペンキ塗りに参上するわけにもいきませんから、自然と塗装仕上げは減っていきます。

 日本の事情は、それでもいいでしょう。しかし、それによって塗装自体が駄目なのだ、とは思わないで下さい。私たちは、アメリカ人たちを消費文明の張本人と、決めつけがちです。ところが、彼らは家の手入れを実にマメにします。そこでは、ペンキが大活躍です。家の男たちが、気軽に何度も何度も、ペンキを塗り重ねていきます。ですから各家々に塗られた塗面は、とても豊かな質感をもっています。

 
生活様式の変化と塗装
 戦後の私たちは、外の世界へと新しいものを求めて進出し、今までのものを捨ててまでも、外来のものを取り入れてきました。そのため、生活環境の変化は凄まじく、いまだに自分たちの生活様式を持てません。
 アメリカ人たちの住宅は、ランプが電燈になったことを除けば、この200年来ほとんど変わっていません。多くのアメリカ人は、200年前とほとんど同じ工法で作られた、木造の家にすんでいます。それは、彼らの生活様式が、200年前に確立されたことの証でもあります。
 私たちが塗装に熟達していないために、塗装の良さが評価できず、塗装を愛好している人たちの感覚を、疑うことがないことを祈っています。

 塗膜をつくる塗装では、下地の材料を限定しません。平滑でさえあれば、なんでも良いようです。石膏ボードやラワン合板などが、よく使われます。ただし、これらを下地の間柱などに、釘打ちで固定するのですが、その継ぎ目はしっかりと処理しなければなりません。と言うのは、塗料は液体ですから、一度乾燥したら伸縮性はなくなります。つまり、下地が動くと、それに追従して延びないわけです。クロスであればいくら下地が動いても、亀裂は表面のクロスまでは及びません。しかし塗装仕上げの場合は、継ぎ目が動けば、そのまま割れとなって表に出てしまいます。継ぎ目が動いても、表まで影響がないように、テープを張って処理します。そして、全体に寒冷沙という薄い布を張って、かるくパテを塗ります。

 パテ処理(塗の粉を使うときもある)を目どめと呼びますが、これをしないと、塗料が均一にのらず、ムラができてしまいます。とりわけ、ラワンのように繊維細胞が大きいものは、必ず目どめをしなければなりません。パテを塗ったあとは、サンドペーパーでこすって平らにします。ここまでが下地処理です。これもできれば、二度三度と繰り返すとより完璧になります。

 すでに、お気づきのように、塗料がのるまでに、継ぎ目の処理、寒冷沙張りと、多くの手間がかけられています。ですから、塗装仕上げは決して、安価な仕上げではありません。パテ、寒冷沙、塗料といずれも安価な材料ですが、何度も繰り返す作業は、高い手間賃となって返ってきます。

 目どめをしたうえに、一回目の下塗りをします。これは下地材が、塗料を吸いぎないように、しかも、下地材と塗料がしっかりと接着するように塗るものです。シーラーなどがよく使用されています。さてここからが、通常言われる塗料を塗る、つまり塗装という作業です。

 塗料は着色するための顔料と、それを溶いて壁面に定着させるための溶剤からできています。その溶剤によって、水性塗料とか、油性塗料とかに分類されます。水で溶いた水性塗料は取扱が簡単ですが、接着力に劣ります。油性塗料はその反対です。しかし、室内でしたら、水性塗料で充分です。水性塗料は水で溶いているため、柔らかく微妙な表情を持っています。ですから、室内にはむしろ水性塗料のほうがいいでしょう。それに対して、ペンキなどの油性塗料は、剛直で耐候性に優れているため、外部に使用されることが多いようです。

 水で溶いたからといっても、一度乾燥してしまえば、水に濡れても流れだすことはありません。アクリル・エマルジョン・ペイント(=AEP)は、合成樹脂の顔料を使用しているため、色の調合が簡単にできるので、使用がふえています。再塗装の場合は、下地処理はサンドペーパーでケレンがけし、そのうえにすぐ塗料を塗ります。これを何度も繰り返すだけで、深味のある塗面になっていきます。

 最終仕上げとして塗る塗料は、単に色をつけるために塗る、といっても過言ではありません。ですから、色については神経をはらいたいものです。大きな面積を塗る場合は、塗料が大量に必要ですから、工場調合になります。この場合、色を決めるのは小さなサンプルによる、一発勝負です。ですからこうなると、色決めは相当に難しい仕事になります。

 色については、誰でもが一家言をもっており、誰にでも気にいられる色ぎめは不可能です。とりわけ、馴染みのない色を使用するのは抵抗も大きく、塗り上がりは賛否両論となることは必定です。しかも、塗装前に塗り上がりを想像することは、簡単なようですが、誰にでも出来ることではありません。無事にすすんできた工事が、最後にきて建築主に気に入られなかったりしたら、施工者としては泣くに泣けません。そこで、色の冒険は避けて、無難な色に落ち着く例が、多くなるわけです。色は、価格や機能には関係が薄いので、よけいに無難な色ということになってきます。

 今まで述べてきたのは、塗面に塗膜を作るものでした。それに対して、表面を染めるように塗る塗料もあります。主として木部に使用されるそれは、半透明で木地を活かすように塗ります。無色透明のものもありますし、顔料を混ぜて着色することもできます。塗膜を作るわけではありませんから、塗料としての見えかたよりも、木地の保護、とりわけ手の脂など汚れの付くのを、防ぐために塗る例が多いようです。これは塗っぱなしの仕上げもありますし、塗って直ぐ拭きとって、しっとりしたした仕上げにすることもあります。オイル・ステインとかクリアー・ラッカーなどがそれです。

 外部となりますと、耐候性が必要ですから、塗料の性能にも、室内とは違ったものが要求されます。また、塗装の下地も、外部では様々です。コンクリート、モルタル、木、鉄…それぞれ下地にあった塗料を、塗らなければなりません。コンクリートやモルタル面には、通常、吹き付け材が施工されます。これは、左官工事のところでも述べていますから、省略して、木と鉄についてだけ述べておきます。

 外部の塗装。これは室内におけるそれとは、少し趣を異にします。というのは、室内仕上げは真近かでみられるため、仕上の質が繊細であることが要求され、丁寧に仕上げることが不可欠です。ところが、外部となると遠目でしか見られません。ですから塗装工事に限らず外部での仕事は、性能を満たすことに重点がおかれます。塗装であれば、表面の平滑さよりも、耐候性や耐久性といったものが、より重要度を増します。もちろん、色については検討しますが、太陽光の下では退色が激しく、微妙な色の違いに拘泥するのは、あまり得策だとは思えません。むしろ、遠くから見たときに、量として感じる色を大切にすべきだ、と匠研究室では考えています。

 外部では、木部に塗られるのは、圧倒的にペンキです。顔料をボイル油でといたペンキは、油分自体の硬化によって、顔料を木材に固着させます。そのため、顔料の接着性が良く、強い塗膜を作りますから、耐候性もあります。接着性のより強い塗料としては、エポキシ塗料などもありますが、いかんせん高価で、通常の住宅建築には、まだまだ使用されてはいないようです。

 外部は室内以上に、塗り直しが必要です。塗ったままで、何年もほっておくと、ポロポロと剥がれてきてしまいます。ポロポロと剥がれる前に、ぜひ再塗装したいものです。塗装は下地作りに尽きるといいましたが、外部にあっても同じです。ポロポロになってしまった上に塗装しても、なかなか綺麗になりません。まだ表面がなんでもない時期に、塗重ねると下の塗料と合体して、強い塗膜となり、美しい塗面を維持することができます。室内以上に、何度も塗重ねることにより、塗料本来の性能が発揮されてきます。つまり塗装は痛んだからと理由によってではなく、年中行事の一つとして、毎年決めた時期に行うものです。

 鉄部に塗装をかける場合ですが、これも基本的には今までと変わりません。しかし、鉄には錆がつきものですから、これに対する処理が必要となります。上塗りにはペンキを使用しますが、ペンキだけでは錆の発生は防ぎきれません。そこで、下塗りとして、防錆材を塗ります。防錆材には、いろいろとありますが、匠研究室としては、ぜひ鉛丹(えんたん)を薦めます。鉛丹は作業性が悪く、また乾燥も遅いため、施工者には嫌われて、類似品の使用にながれやすいようです。しかし、防錆処理には鉛丹です。今でもこれ以上の防錆塗料はない、といっても過言ではありません。

 鉛丹は朱色をした塗料で、通常は鉄製の手摺や階段などが、工場を出るときに塗られます。工場で塗られるため、塗装の信頼性は高いのですが、運搬中や取付のときにキズをつけると、その部分だけ剥がれてしまいます。それをそのままにしてペンキを塗ってしまうと、後日そこから錆が発生しますから、かならず補修の塗装をしておきます。

 技術もなにも必要無い、ただ、心配りだけあればできる補修塗装、実はこうした細かいことが大変に大切なのです。ハケの運び方、それももちろん大事です。しかし、それは本職なら出来て当たり前です。主な技術が開花するためには、ささいで細かい心配りが、それを支えているのだと気付いてください。優れた職人たちは、そうした作業の手を抜いてはいません。

 塗装は楽しい作業です。何しろ色という愉快なものがあります。住宅の塗料は、量が少ないので、たいてい現場調合です。美術の時間でも思い出しながら、職人と一緒になって色決めするのも悪くありません。試し塗りを繰り返しながら、だんだんと希望の色に近ずけていけば、建築主として家作りに参加している、充実感が味わえるでしょう。


次に進む          目次に戻る

「タクミ ホームズ」も参照下さい