ハードとしての確実な家作り:実践編 

30.設備設計について 31.電気設備工事

30.設備設計について
 電気にしろ、水道にしろ、部屋に見えている器具だけでは、望む機能は働きません。器具のところまで、電気や水を運んできてやらなければ、ただの飾りです。それらを運ぶための血管のようなものは、ふつうは<隠蔽>といって、仕上がった後からは、見えないように施工します。本論は、実際になされる建築の工事と、同時進行で書き進んでいます。ですから、実際にそうした工事をする時期、つまり壁下地のところで、設備工事について一度触れたのでした。

 工事の進行を示す工程表でも判るとおり、設備工事は、最初から最後まで係わってきます。ところが、通常の建築案内書は、設備工事として、最後にまとめて記述する例が、多いようです。それは設備工事が建築工事より、はるかに最近になって発生したので、建築工事とは別に記すという名残りです。今日的な設備がない時代にも、人は家に住んでいたのですから、設備は家を成り立たせる不可欠の要素ではありません。

 水道のない家を考えることは可能です。たしかに戦前の農家では、家の中に水道はありませんでした。それでもそこに人は住んでいました。電気のない家も考えられます。現代人はランプやろうそくの、山小屋生活にあこがれすら持ちます。しかし、屋根や床のない家は考えられません。もし、屋根のない家を想定しても、それはもはや、家という概念で語られる物ではないでしょう。そうした意味で、今でも、設備工事は付加的なものであり、最後に語られる宿命にあります。

 設備工事は目に見える便利さをもたらすために、日に日に大きな部分を占めるようになりました。とりわけ設備を構成するものは、ほとんどが工業製品です。そのため大企業が広告などを通じて、大々的にイメージをばらまきます。その上、しっかりした原価計算にもとずいて売られていますから、利益の確保が正確に予測できます。建築主も便利さを好み、施工者も十分な利益が確保できるので、設備の占める割合は大きくなっています。

 家の本質は設備にはないと言っても、今日の家で、電気や水道のないのは考えられません。ですから匠研究室でも、実際の家を設計するときは、設備工事にも多大の神経を払っています。ここで少し脱線しますが、設計者の役割分担を説明します。設計には
1 企画      A 企画
2 基本設計   B 建築設計
3 実施設計   C 構造設計
4 工事監理   D 設備設計

という二つの分け方があります。1〜4は、設計の進行順序にしたがって分けています。これは、すべて一人の人がやっても、いっこうに構いません。しかし、A〜Dは、設計そのものの内容で分けていますから、そうはいきません。AとBは、同じ人がやる場合もありますが、B、C、Dは違う人がやります。

 通常、設計者というと、建築の設計を思われるかも知れません。しかし、設計界の内部をみると、構造設計者も設備設計者もそれぞれ別にいるのです。彼らは直接には、建築主とは接触しません。建築設計の下請けという形になるため、目だたない裏方の存在です。

31.電気設備工事

 電気設備は、電気を光として使う照明と、電気器具のためのコンセントに大別できます。

照明

 通常、室内で使用される電球は、白熱灯か蛍光灯です。(最近ではヨーソ電球なども出ているが、それらはカタログを見て欲しい)白熱灯にしろ蛍光灯にしろ、電球自体は安いものです。電球は比較的寿命の短いもので、一年に一度くらいは交換します。ですから、電球の交換を考えておかなければなりません。

 電球から発せられる光を、そのまま目にするとまぶしいので、電球に覆いをかぶせます。その覆いに、様々なものがあるわけです。つまり、照明器具の設計とか、照明のデザインといわれているのは、光源である電球に、どういう覆いをかけるかということです。そして、光源からでた光が、その覆いを通過する様子や、通過して変質された光の拡散され方を、考えるのが、照明の設計です。匠研究室の考える照明の設計方針は、<考える家>で述べました。それを参照しながら、以降の話を御読みください。

 明るさの採り方には、二通りあります。直接照明と間接照明です。直接照明とは、字の通り電球から発せられた光を、直接目にする照明です。照明のエネルギー効率としては、無駄のない方法です。最も簡単でしかも安く、そのうえ維持費も安いという優れ物です。まず、その例を考えてみましょう。

 
レセプト+電球

 最初は、空中に吊るす照明ではなく、壁付け、もしくは天井付けというような直接照明です。白熱灯では、レセプトという器具がこれに当たります。左図のような、レセプトに裸電球という超貧乏な組合わせは、レセプト100円+100ワット電球160円、合計260円で明るさを手に入れることが出来ます。安くても、これはこれでよいものです。照明器具としては最も安価ですが、完璧に設計された中に置かれたレセプト+裸電球は、意外な面白さを見せてくれます。

 まぶしさが気になるようであれば、裸電球にかえて、ミラーボールという半分だけ銀を塗ってある電球を使えば、まぶしさが防げます。ミラーボールーといえども安く、290円くらいです。この組み合わせの中で、少し凝ったことをしたければ、変わり電球を使用することもできます。いろいろな形の電球が、市販されていますから、好みに応じて選んでみるのも面白いでしょう。

 蛍光灯で、これと同じことを考えてみますと、二通りの例が考えられます。同じくレセプトをつかって、電球だけ球型の蛍光灯を使用する場合です。今では白熱灯専用の口金であった、レセプトにも適合する球型の蛍光灯が市販されています。これを使用すると、レセプトが100円+17ワットの球型蛍光灯が2、000円(白熱灯60ワット相当)です。球型の蛍光灯は、安定器が内蔵されているために、やや大きく高価な電球です。ただし蛍光灯の光には趣がないため、この組み合わせは、白熱灯のようには効果的な照明を演出できません。

 次は、トラフという蛍光灯専用の器具をつかってみます。トラフとは裸の蛍光灯器具です。トラフはふつう看板の中など、隠されてしまう部分に使用されています。トラフは、蛍光管つきで市販されていることが多く、20ワットが3、000円、40ワットが4、000円くらいでしょうか。

 このトラフは匠研究室の愛用品で、一軒の家で必ず何ヶ所は使う、といっても過言ではありません。しかし、トラフはレセプト+裸電球とことなり、直接照明の光源としては使えません。蛍光灯の光は趣がありませんから、いくら匠研究室でも、トラフをそのまま見せたくはないのです。トラフは隠蔽用の器具です。間接照明か、そのうえに覆いをかけて、光だけ使用するには、最も安価なので、最適の器具というわけです。

 直接照明とか間接照明といった、光の採り方にに対して、どこから光を採るかという問題も設計の対象です。

1.天井面に仕込む  例 光天井 ダウンライト 2.天井面につける  例 シーリングライト
3.天井から吊るす   例 コードペンダント 4.壁面に仕込む   例 ウオールライト
5.壁面につける     例 ブラケット 6.壁面から持ち出す
7.床面に仕込む    例 フロアーライト 8.床にたてる      例 スタンド

1〜8までのどれでも、直接照明にすることも可能ですし、間接照明にすることも可能です。間接照明というのは、建築的に光源が見えなくなるような細工を、せねばなりませんから、これ以降ことわりがない限り、直接照明と考えてください。

 
ダウンライト

 1のもっとも多い例は、ダウンライトです。ダウンライトというのは、下向きに光がでるものをいうのでしょう。左図の1のようなものですが、2のようなものもダウンライトと呼びます。光源が見えず、天井面がスッキリと仕上がるため、設計者が大好きな照明器具です。確かに、器具自体も安く、光の色や向き、強さの調節が簡単なので、使いやすい器具です。

電球の交換などにも、簡単に対応できます。いいことずくめのようですが、欠点のないものはないと言うとおり、光源が小さいですから、部屋全体では明るさにムラが出来やすく、ダウンライトだけで全体照明をまかなうには、沢山のダウンライトが必要です。そのために、結果としては高価になりやすい。また、天井面よりも上に器具が飛び出すので、天井懐がないと使用できません。それと、電球の熱がこもりやすく、そのため電球の寿命が短くなってしまうきらいがあります。

 ダウンライトの長所は、住み手にとっても長所ですが、よく考えてみると、欠点は住み手にとってだけ、欠点となっていることに気付きます。点光源であるなら、台数をふやせばいい、それは売り上げ増です。電気を喰うというのは、電気料が高い、それでも使い手が納得してくれるなら、電力会社としてはこんな好いことはない。つまり、前述の欠点は、電気や照明器具を売っている方には、長所とはいわないまでも、決して欠点ではないということです。

 たしかにダウンライトは、なかなか良い器具です。しかし、設備の世界での法則が、ここでも貫徹しています。それは、設備的な便利さ快適さを手にいれるには、それに比例してお金がかかるということです。究極の設備空間とは、スペースシャトルの中です。設備設計は、常にコストパフォーマンスとの争いで、投じたお金に見合う見返りがあるかどうか、が第一番に検討の対象になるわけです。このあたりが、建築の設計とは本質的に異なるところです。

 
照明の方向とは
 匠研究室は、上方からの点光源にはいささか疑問を持っていますので、居室ではダウンライトをあまり使用しません。照明のカタログ写真などでも、ダウンライトを使用した居室を見ることがありますが、たいていそれらには人間が写っていません。居室の主人公は、人間であるべきで、何もない部屋や商品の展示のための照明とは、違う考えが必要です。
 ダウンライトは、特に狭い場所での照明には、とても便利です。玄関や廊下、物入れの中など、照明器具がじゃまな場所には最適です。ですから、ダウンライトの本来的な用途は、人間をではなく、物を照らす照明器具だと匠研究室考えています。

 次の光天井という照明方式は、匠研究室の一番の推薦方式です。ダウンライトとは違って、これは点光源ではありません。通常、光天井と言った場合は、天井面の全部を発光源とします。光天井は、部屋全体に柔らかい光が飛び回り、気持ちのよい雰囲気を作ります。全面の光天井は、下から見える天井面の上に、もう一つの天井を作らなければならず、天井懐も深く必要ですし、天助を2重に張るためのお金がかかります。また、天井から電球を交換できるように点検口をもうけると、点検口の部分だけ仕上がりが異なり、全面の光天井ではなくなってしまいます。それを嫌って、裏から電球を交換できるような仕掛を作ると、本当に大がかりになってしまいます。

 
埋め込み照明

 匠研究室でも、事情が許すときは、全面の光天井にすることもあります。しかし、一般の住宅では全面の光天井とはせず、天井の一部を切り欠いて、その中に照明を仕込みます。下から見上げると左図のようになります。全面の光天井に比べると、光源が狭いので、光に包まれる感じにはいささか劣りますが、それでも優しい光が発散されて、良いものです。光天井では器具が見えませんから、この光源には安いトラフを使用します。

 こうした照明方式は、建築の方で箱を作ってやらなければならないので、施工者はいやがります。天井を平らに張ってしまってから、その後で電気屋に天井を切り抜かせて、ダウンライトをつけさせたり、直付けの照明器具を付けさせたりする方が、施工上ではずっと楽なのです。しかし、最初の見積でしっかりと金額をおさえてあり、決して赤字になるはずはありませんので、きっちりと施工してもらいます。

 光天井という天井に仕込んだ照明をうまく作る鍵は、なるべく広い発光面を確保することです。発光面が広いということは、自然光に近い状態にできるわけです。そのためには、白熱灯よりも蛍光灯の方が適しています。白熱灯で広い発光面を作ろうと思えば、電球をたくさん並べなければなりません。白熱灯は、光と一緒に熱もだしますから、たくさんの電球を使うと、その熱の処理の問題がでてきます。また、同じ明るさを実現するには、蛍光灯の方が少ない電気料で済みますから、この方式の照明には、蛍光灯と言うことになります。

 光天井は、和室にも洋室にもうまく馴染んでくれます。和室の天井仕上げに乳白の照明カバーを使用するのも、なかなか良いものですが、竹の網代や籐の網代にすると、おもしろい効果があります。網代を透かしてもれる蛍光灯の光は、普段見る蛍光灯の光と違って、とても艶っぽいものです。昼間の事務所などでみる蛍光灯とは、別もののように見えて、色は光にあると、ということを実感させてくれます。

 洋間の場合は、天井面の仕上げが単純であることが多く、蛍光灯の光は、寂しさを感じさせることもあります。壁や床の仕上げと、調和をはかっておく必要性は和室以上です。意外に感じられるかも知れませんが、和室よりむしろ洋間の照明設計の方が、難しいように匠研究室は感じています。

 写真や映像などという、実物以外の物で照明を説明する場合が多い昨今です。しかしながら、光そのものを、換言すれば雰囲気を写真に採るのは大変に難しいため、その説明はどうしても照明器具そのものになってしまいます。そのうえ、建築的な照明方法は、照明器具メーカーに利益をもたらしませんので、天井に仕込む照明方法式は、宣伝されません。ですからあまり知られてはいませんが、この光天井は匠研究室のお薦め方式です。

 
天井に仕込む間接照明

 天井面に光を仕込む照明方式は、もう一つあります。それは天井面を左図のように段差を付けて、そこに照明を仕込む方式です。これは世にいうところの間接照明です。白熱灯でこうしたときは熱の問題、蛍光灯の時は音の問題に注意します。蛍光灯は、安定器というトランスをつかっていますから、ブーンという小さな音がしています。解放面に付けてある時は、その音は気になりませんが、左図のように囲われた所に付けると、音が増幅されてしまうことがあります。これが予測できるときは、安定器を内蔵しないタイプを使用して、安定器だけはまとめて別の場所におくことです。さもないと、完成してから、思わぬ不快感を味わうことになります。

 間接照明は、壁や天井に一度反射させた光を使用するため、反射面の仕上げの色にも配慮が必要です。光源から発せられた光が、反射面の色に影響されて、机の上に落ちてきた時には、思わぬ色になっていたりします。

 もう一つは、俗に<直か付け>と呼ばれている照明器具で、洋間には多いものです。天井から光を採ると言う点では、光天井と同じですが、光源の大きさに違いがあります。しかし、施工も楽だし、一般化しているもので、種類も多く市販されています。白熱灯のもの、蛍光灯のもあります。ここらあたりから、器具自体の装飾性が、少し必要になってきたと言えるでしょう。

 和室では、吊り下げ型が最も普及している照明方式ではないでしょうか。畳の部屋のまん中に一つ、天井から下がった丸型蛍光灯の、四角い照明器具というのが、今日の和室の標準使用となった感があります。たしかに経済的です。しかし、これはなんとしても、侘びしい照明方式です。レセプト+裸電球を、超貧乏な照明といいましやが、吊り下げ方式は、ずっとお金がかかっていながら、精神的にはもっと貧乏な照明だと、匠研究室はでは思っています。

 
天井に照明はなかった
 奇異に感じられるかも知れませんが、西洋の部屋の天井に照明はありませんし、日本の和室の天井にも照明はありませんでした。洋の東西を問わず、住宅に照明が入ってきたのは、ここ最近50年くらいのことです。
 西洋では壁に掛けていたランプに代えて、そのままの位置に電灯を付けました。ですから、彼らの明かりの文化は、そのまま今に引き継がれています。ところが、事情はまったく同じであったにもかかわらず、日本では行灯(あんどん)に代えて、天井に明かりをもっていきました。
 西洋の照明が、暗さを基調にしたなかに、点として光を使うのに対して、天井照明の日本では、明るさを基調にします。ですから部屋の中心に、拡散する光源を吊るして、全体を照らします。この照明方式は、照明効率に優れ安価です。しかし照明が、部屋を使用する人間の意識の支配下にあるかというと、必ずしもそうとは言えないようです。演出とか作意とかいうことを、私たちは忘れてしまったような気がしてなりません。

 天吊り式の照明器具自体は、様々に手をかえ品をかえて、売られています。ところが、部屋全体の中で、照明をどう採るかということは忘却されたままです。器具にだけ注目がいっても、基礎的な部分で検討されていないので、どうにも納まりの悪いことになっています。売れるとなれば、無節操に何でも売りたがるN電工の製品は、とりわけ醜悪だと感じるのは、匠研究室だけでしょうか。

 天吊り照明の悪口をいっていますが、匠研究室とても使わないわけではありません。天吊り器具は、部屋の全体照明として、市販されているのでしょうが、匠研究室ではそうは使いません。全体照明はなるべく天井に仕込んで、天吊り器具は部分照明として使用します。テーブルの上を照らすコードペンダント、吹き抜けに下げる堤灯のような明かり、軒先に下げる雪洞(ぼんぼり)などなど。ところが、部分照明を使用するには、建築的な設計が充分なされていないと、うまく組み込めないものです。設備と建築が、調和されていることが不可欠です。建築の設計者が、設備の計画もする理由は、ここにあります。

 天吊り照明のもっとも豪華なものは、なんといってもシャンデリアです。高い天井から下がるシャンデリアは、すばらしい雰囲気をもっています。やや暗めの光の中で、きらめくクリスタルの輝きはすばらしいものです。匠研究室もシャンデリアは大好きで、かつて、直径4メートルを越えるシャンデリアを、つくったことがあります。200畳くらいの広いホールの天井に付けたシャンデリアは、ゆったりとして好いものでした。しかし、残念ながら一般の住宅では、シャンデリアを使うほどの部屋がつくれず、匠研究室では使ったことはありません。

 今では天井面にそって考えてきましたが、光源をおく場所は、壁でもまったくかまいません。むしろ前述のとおり、歴史的には壁に光を求めた方が普通だったのです。そして、採光のために開ける窓を、考えてみれば判るとおり、壁に光を求める方が自然でもあります。しかし、壁に明かりをおくことは、狭い部屋をますます狭くすると感じさせます。また、部屋の明るさに、ムラが出来やすくもあります。ですから、日本では今まであまり使われてきませんでした。

 壁に仕込む照明ですが、これは光天井と同じです。まず、壁の一部をくり抜き、電球を仕込みます。そして、障子や乳白色のアクリルなどでカバーをします。壁で問題になるのは、照明を仕込む位置です。天井は人が触れませんから、どこにでも仕込めましたが、壁はそうはきません。また、光天井のように全面の照明としてしまうと、何も壁に掛けられなくなってしまいます。

 一番安全なのは、鴨居と天井の間の壁を使うことです。ここに電球を仕込むと、光天井とはまた違った光が採れます。四方の壁に仕込めば、光がシャワーのように落ちてきて、光の風呂には入っているような感じが楽しめます。一面だけを使用すれば、方向性のある明りが得られます。同じように、上の方に光源をおくにしても、天井に仕込むのと、壁に仕込むのでは、随分と雰囲気が違うものです。

 壁面を光源とするものでは、直か付けと、腕木を出した形のブラケットがあり、どちらも白熱灯・蛍光灯の両者があります。これは、照明のある位置としては、古くからある位置です。つまりランプが、ここに吊り下げられていたのです。それが電灯に代わったのだとは、前述しました。そのせいでかどうかは、判りませんが、ヨーロッパから輸入される物には、なかなか美しいものがあります。

 壁づけの照明器具は、人間の目に近いため、器具自体がデザインされていることが必要です。昼間もそこにあるわけですから、明かりを付けた時もさることながら、明かりを付けなくても美しくないと困ります。このあたりから、壁づけ器具の難しさが始まります。照明器具のカタログは、器具を単品で掲載しているだけですし、ショールームといえども単品でしか見ることは出来ません。どういう部屋作りをするかという、設計意図が器具デザインを決めていきます。

 壁付けの照明器具には、おびただしい種類が市販されています。白熱灯はもちろん、蛍光灯や特殊な電球を使用したものなど、最近では、壁づけの照明器具には、面白いものが増えてきました。主として店舗で使用するために開発されたのですが、目的別にさまざまな工夫が施されてきました。住宅で使用するには、いささか小手先の遊びというきらいはありますが、特定の場所にはまると効果的です。

 日本の照明は、明るさを基調とするので、壁付けの器具だけで、全体照明とするわけにはいきません。ランプがそうであったように、手元を照らすのが、壁付け照明の主な役目でしょう。ですから、日本で使用される壁付けの器具は、部屋にではなく、玄関の外とか、風呂場や脱衣室とかに、使用される例が多いようです。こうした場所では、防水性が要求されます。

 床に照明を仕込むというのを考えてみましょう。人を照らすために、下から光を発することはありません。しかし、廊下や玄関などのアクセントとして、床に明かりを仕込むことは、大変に有効です。今日では、光をうまく通す床仕上げ材がありますから、試してみるのは価値があります。

 床仕込の照明器具はあまり市販されていません。建築とからめて、考える必要があります。匠研究室では、商品を空中に浮かべるという設計主旨のもと、床の全面を発光源とする店舗を作ったことがります。光の上を歩くと言うのは不思議な体験です。下から光が来ることについての拒否反応はありませんでしたが、これは店舗でだけ許される照明方法でしょう。

 床に立てると言うのは、おそらく人間が照明を考え出したときに、一番最初に思い付いた形だろうとおもいます。つまり、松明(たいまつ)がその原形です。時代が下ってくると、それが行灯という形で家の中に入ってきます。ですから、火を床の上に置くというのが、人間にとって、最も馴染みのある形です。西洋でも、それはまったく同じで、フロアースタンドという形で、彼らは今でも使っています。ところが、今日の日本では、床に置く照明はほぼ絶滅した、といっても過言ではありません。

 床に座る生活が長かった日本では、台や行灯といった照明が主流でした。それらは、座った人間の顔のあたりにあって、照らす対象のすぐ近くに位置していました。その上、ゆるく頼りなげな弱い光でした。こうした光を如何に使うかというなかで、私たちの光に対する感覚が、形づくられてきました。上方から光をとる今日の形式とは、まったくといって良いくらいに、異なっていました。

 今日、日本の住宅はきわめて狭い部屋しかないので、照明を床になど置けない、と言われるかも知れません。けれども、かっての住宅も狭さという点では、大同小異で、やはり狭かったのです。床に照明を置くのは、いろいろ不便なことが多いのは事実です。例えば、小さな子供がつまずいて、ひっくり返す、掃除のたびに動かさなければならないなど…そうした不便さはその通りですが、それを差し引いても余る良さが、床置き照明にはあります。

 照らすものの近くに、弱い光を置くことは、そのものの立体感を浮き上がらせて、たいへん艶っぽくみせる働きをします。その辺の事情を熟知した西洋では、いまだにフロアースタンドが健在で、ソファーの近くなどに置かれています。椅子に座って生活をする彼らは、テーブルの上にも明かりを置きました。これらが、前述したかつての日本の、光と照らされる物の位置関係と、まったく同じだということは、もう繰り返すまでもないでしょう。

 同じ照明でも、はじめから物を照らす使命のものがあります。今までの照明が、部屋の中だったのに対して、庭などの外部を照らす器具があります。これらは、人間を照らすものではありません。ですから、路地、庭、駐車場など、人間が遠くからはなれて見たときに、美しく見えればいいわけです。これらは、自分が外にいて、試してみることができますから、気に入った照明状態になるように、試行錯誤しながら構成できます。

 外部の照明には、気をつけることが二点あります。一つは、防水性です。雨ざらしになりますから、当然の配慮です。次は照明器具までどうやって、電源を持っていくかです。外部の配線は、空中を飛ばすか、地中に埋設するしか方法はありません。どちらをとるにしろ、雨ざらしになりますから、配線自体も防水が必要です。とりわけ地中に埋設するときは、電気分解による腐食がおきやすく、慎重な対策が必要です。

コンセント

 電気設備工事として、もう一つの柱は、コンセント工事です。これは、照明と異なり、見え方には余り関係ありません。ですから、必要なところに必要なだけ、配すればいいでしょう。一つの部屋に、三ヶ所程度というのが、最近の傾向でしょうか。一ヶ所につき3、000円くらいですから、設置した個数×3、000円で、金額がでます。ただし、水がかかる恐れのある場所のコンセントは、アース付きとします。また、電子レンジやクーラーなど、電気を大量に食うものは、単独の回路としたコンセントから電気をひきます。

 照明のところで触れませんでしたが、照明はいつも、つけっぱなしではありません。つけたり、消したりできないと困ります。照明器具にスイッチがついていない場合には、別にスイッチが必要です。スイッチ一ヶ所につき、3、000円くらいです。最近では、様々なスイッチが市販されています。何ケ所からも操作できるスイッチ、しばらくたってから消えるスイッチ、小さな明かりが内蔵されたスイッチ、明るさを調節できるスイッチなどなど、まさに便利さは、お金で買うものだと実感します。

 他に電気設備工事に含まれるものは、
1.電話配管
2.テレビ・FMのアンテナ、配線
3.インターホン
と言ったところでしょうか。

 電話も、電電公社からNTTとなって、だいぶ変わりました。様々な受話機が市販されてきましたが、建築工事として、電話を扱うのは配管までです。つまり、そうした受話器が使えるように、あらかじめ壁や床の中に、パイプを埋没しておくわけです。そして、後でその中に電話線を通して、受話器を設置します。

 最近は、切り替え電話、親子電話、コードレス電話など、いろいろと市販されています。コードレス電話にしても、親機は必要です。電話の機種を決める前に、受話器の位置だけは決めて下さい。何台かの受話器を使用するのであれば、何ヶ所かに配管しておきます。電話配管さえしておけば、たいていの受話器が使用できます。

 テレビやFMは、アンテナがあった方が、きれいに受信できます。とくに地方ではアンテナは必携です。アンテナから受信機までを、コードで結びますが、このコードもやはり見せたくありませんから、壁の中にかくします。普通の電線は、二本が横に並んで一本となっていますが、このコードは同軸ケーブルといって、二本が同心円状になっています。もっと安いフィーダー線というのもありますが、他からの電波の影響を受けやすく、同軸ケーブルの使用を薦めます。テレビも一家に二台三台の時代になってきました。何台ものテレビに配るときは、分配機や増幅機をはさみます。

 インターフォンも、いろいろと種類があります。ベルやチャイムという音だけのもの、電話式に声が聞こえるもの、テレビが組み込まれて顔が見えるものなど、当然この順番に高価になっていきます。 


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「タクミ ホームズ」も参照下さい