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ハードとしての確実な家作り:実践編 | ||||||||||||||||||||||||||||
32.機械設備工事 設備工事には、もう二つあります。電気設備が、電気という眼に見えないエネルギーを、相手にしていたのに対して、水と空気を相手にする、設備があります。それは、給排水衛生設備であり空調設備ですが、それらを一括して機械設備と呼びます。こうした設備工事を、以下の6項目に分けて、述べていこうと思います。ただし、1〜4は水道屋が施工し、5と6はそれぞれ別の担当者が施工しますので、章を分けてあります。 1.給水設備工事 2.排水設備工事 3.給湯設備工事 電気設備は、照明という光をとおして、室内の雰囲気づくりに、大きな影響を持っていました。しかし、水は、雰囲気づくりには無関係です。水は雰囲気と言ったレベルではなく、人体の生命や健康の維持に、直接かかわるものです。しかも、水は蛇口から出て、出た水が無事に流れて行ってくれれば、いいわけです。ですから、できあがった家を見たのでは、水が何処からどう流れてきているのか、判らないように<隠蔽>配管とします。 これから述べる、各種設備工事は、便利さという秤でのみ、計られるものです。たとえば、家のどこでも蛇口をひねれば、お湯が出ると言うのは、便利に違いありません。またいつでも、風呂にはいれたり、紙のいらないトイレ、いつでも一定の室内気温、こうしたものは便利に違いありません。建築が見た目を大事にするのに対して、設備は性能を大切にします。 かつては水道などという便利なものはなく、お金持ちの家でも、井戸から水を汲んでいました。井戸は井戸で利点もありますが、今日では現実的ではありませんので、井戸は省略して、水道の話です。 水道は、それぞれの自治体が管理しており、道路下の本管から分岐して、敷地の中に引き込みます。本管は、50〜100ミリの直径ですが、個人の家では、そんなに太い水道管は不要です。かつては、一軒の家にせいぜい2・3ヶ所しか、蛇口がありませんでしたから、一番細い13ミリの水道管で引き込めば、充分でした。しかし、最近の住宅は、もっとずっとたくさんの蛇口がありますし、また二階にも水道はいっています。ですから、13ミリでは少し細すぎるようで、25ミリでとったほうが、良さそうです。直径が2倍になると、そこを流れる水量は、4倍になります。 敷地に入った水道管は、まず水道の使用量を計るメーターをくぐります。水道は人間の口にはいる水を運んでいますから、管理者の神経の使い方は、大変なものです。メーターは、管理している市や区から、借ります。メーターは借り物であって、あなたのものではありません。このメーターがないと、水は流れません。
メーターをくぐった水道は、敷地のなかを建物に近づいていって、地中で建物のなかに入ります。そこで分岐されて、それぞれ水が必要な場所に、水道管は枝分かれしていきます。地中にあった水道管は、土がいわば保温材の役割を果たしてくれます。ところが、地上にでると、直接に寒さに曝されますから、氷点下にまで下がる地方では、耐寒被覆をしなければなりません。これをしておかないと、寒い冬のあいだに水道管が破裂してしまう恐れがあります。通常は発泡スチロールのカバーをかぶせた上を、黒いテープで押さえます。 水といって、馴染みのあるのは、なんといっても、台所でしょう。台所の流し台の上には、必ず水道の蛇口があるはずです。以前は、水だけがでていましたが、最近ではお湯も、でるようにするのが当然になっています。ですから、水だけの蛇口ではありません。混合水栓といって、水とお湯を、混ぜ合わせる蛇口が、使用されます。お湯の供給方法については、給湯設備で述べることにして、お湯はきているものとして、話を進めていきます。 厨房用の混合水栓は、80度くらいできたお湯を、適当な温度まで下げるためのものです。水とお湯に、それぞれ水栓がついていて、使う人が自分で、適当な温度に調節するのが、最も簡単なものです。ところがこれは、使うたびに、両方の水栓を調節して、温度をきめてやらなければならず、ひんぱんに止めたり、流したりする場合は、めんどうです。そこで、一つのレバーで水とお湯が、一度に調節できるものが、市販されています。前者を2バルブ混合栓と呼ぶのに対して、これはミキシング・バルブ混合栓といいます。もちろん、この方が高価で、2バルブのが1万円前後であるのに対して、3万円くらいします。 水とお湯を混ぜると簡単にいいますが、水とお湯を混ぜ合わせて、いつも決められた温度にしておくことは、なかなか大変なことです。というのは、水もお湯も水圧が常に変化していますから、単に流量の調節だけでは、温度は一定にはなりません。片方の水圧が高くなると、高くなった方が押して、温度を変えてしまいます。そこで、いつも一定の温度のお湯を吐水するために、いろいろな機構を内蔵しています。 温度調節の機構は、ここ10年間に、めざましい進展をとげ、手軽に適温のお湯が、使えるようになりました。その最大の原因は、湯沸機の改良ですが、それは、給湯設備のところで詳述します。給湯機だけではなく、混合水栓もめざましい改良を、とげたものの一つです。2バルブでもミキシング・バルブでも、人間が水とお湯を混ぜるか、機械が混ぜるかの違いを別にすれば、機能的な違いはありません。台所の雰囲気に合わせて、様々な色や形の混合水栓が市販されていますから、適当なものを選べばいいでしょう。 日本の水道は、給水水圧が低いので、逆流の恐れがあります。その水質を守るため、検査に合格した蛇口しか使えません。給水水圧が高ければ、逆流ということは考えられませんが、低いと蛇口から不純物が、逆流するかもしれないというわけです。 給水水圧を高くするには、水道本管の耐水圧を上げなければ、漏水してしまいます。そこで、耐水圧を上げるのではなしに、水栓金物の精度を上げて、水質を確保しようというのが検査の目的です。いずれにせよ、水道が逆流すると、どういうことになるかは簡単に想像できると思います。一軒の家から逆流した水は、次々と他の家にも流れていってしまうわけですから、恐ろしいことになります。 日本の検査に合格していない水栓は、原則として使用できません。原則と言ったのには訳があります。絶対に使用できない、というわけではありません。逆流しないようにすれば使えます。ではどうするか、一度タンクで受けてしまえば、いいわけです。つまり、受水タンク=受水槽を設けて、そこに水を一度受けます。そして受水槽から家の中に水を引けば、どんな水栓金物を使っても、いいことになります。 三階建以上の建物では、水道本管と直結しても、本管にそこまで押し上げる水圧がないので、三階では水がでません。そこで、受水槽を設けて、一度そこへ水を受けてから、ポンプで上に押し上げてやります。こうすれば水道本管とは切れていますから、どんな水栓金物でも使えます。 最近では、日本のメーカーも、様々な水栓金物を市販するようになりましたが、見た目のきれいさでは、まだまだイタリアあたりの色とりどりの物には、かなわないようです。ただし、水を止めるという性能となると、だんぜん日本の物の方が、優れているようです。自動車についても、同じことが言われていますが、日本の工業製品は、一般に性能は優れているけど、雰囲気に欠けているようではあります。雰囲気と性能、どちらを選ぶかは、建築主の趣味によるところでしょう。 工業製品は、メーカーが作っていますからしっかりしたカタログや、ショールームがあります。ですから、そうしたもののなかから、気に入った物を選ぶわけです。どういった物を選べばいいかは、建築主の財布の中身と、相談のうえで決めればいいことで、どれを選んでも、水栓としての性能は保証付きです。 水を流しっぱなしにしておくと、水栓が汗をかいてきますが、これは故障ではありません。冷たい水が、水栓を流れていると、その冷たさが、水栓にもうつって、空気の中の水蒸気が、水栓に結露してくる現象です。今のところ、これを防ぐ方法はありませんが、幸いなことに、水栓はそれ自身が、水を使用している場所にありますから、結露水がしたたり落ちても、問題にはならないようです。同じ問題が、水洗トイレのタンクにも起きることがあるが、これは衛生工事で述べます。 通常の水栓は、水を止めるコマという部分に、ゴムのパッキンを使用していますので、長年つかってゴムが劣化してくると、水切れが悪くなってきます。ですから、その時はコマを取り替えるのですが、シングル・レバーの混合水栓は、内部機構が複雑で、素人の手には負えません。家を建てたときの設計者や、大工に電話するべきでしょう。 水栓はきつく閉めすぎない方が、いいものです。チョロチョロと細かく水が出ているのも、気持ちよいものではありませんが、余り強い力で締め付けると、ゴムの劣化が速くなるようです。また、通常の力で閉めても、チョロチョロと出るようであれば、そろそろパッキンを取り替える時でしょう。 次に、水道が引かれるのは、風呂でしょうか。風呂では、水も必要ですが、水のまま使われるわけではなく、それを温めてお湯にします。以前は胴長水栓を一つだけつけて、風呂桶のふちで首を振らせて、浴槽にも洗い場でも使ったものでした。ところが、だんだんと裕福になってきたので、風呂場の設計も、贅沢になってきました。浴槽は浴槽専用の吐水口をつけ、洗い場は洗い場専用の水栓をつけるようになりました。 風呂の場合、単なる混合水栓なら厨房と同じですから、問題はありませんが、シャワーをつけると、いろいろな問題が発生してきます。普通の水栓は、水が今までとおってきた水道管と、同じ太さで吐水しますから、そこでの圧力の変化はありません。ところが、シャワーは小さな穴から勢いよく噴出させなければ、シャワーとしての効果がありません。言い替えると、シャワーの口の部分で、水に圧力がかかるわけです。 この圧力がクセもので、給湯装置とうまく合わない例がありました。最近では、それも解消されてきてはいるようですが、瞬間湯沸かし器の能力の小さな物とは、相性が悪いようです。シャワーの温度調節は難しいのですが、それだけに細心の注意を払って、機種を決めるべきでしょう。 シャワーは、もちろん裸の状態で使いますので、突然お湯の温度が上がったりしたら、火傷という事態になりかねません。ですから、多少高価でも、ここには自動温度調節機構のついた、混合水栓を使いたいものです。蛇足ながら、シャワーは身体に浴びるためだけに、便利だというのではありません。風呂桶や、風呂場の掃除にも大変便利なもので、浴用洗剤を使った後、シャワーで洗い流すと、風呂場は簡単にきれいになります。実はそのためには、通常のシャワーホースよりも、もう少し長い方が便利なのですが、メーカーの人たちは、こうした用途は考えていないようです。風呂については、給湯設備のところでもう一度詳しく扱います。 最近の住宅では、くみ取り式の便所ということは、まずありません。ほとんどが、水洗式のはずです。水洗式になれば、トイレにも水が必要です。便器自体については、衛生設備工事の方で述べますが、洋式便器と水道管の接続部に、ときどき問題が発生しています。というのは、接続されただけなら、なんの問題もないのです。ところが、使用時には便器のうえに、人間の体重がのります。その重さによって、便器がいくらか、沈んでしまうことがあります。ところが、水道管は壁から出ているので、それにつれて沈んではくれません。こうしたことが、繰り返されているうちに、水道管と便器の接合部から漏水が始まります。 この漏水は、設備工事だけの責任ではありません。洋式便器は、床との接地面積が狭いため、便器と体重の合計したものが、床の一点に集中してかかり、床はそれを受け止めきれずに、しなってしまいます。一般の木造住宅の床は、体重を受けて、ほんの少しながら、しなるようになっています。それが、素足であるく日本の住宅の床の、実に繊細な感触を支えているわけです。洋式便器の使用に、まだ慣れていない我々は、便所の床も、通常の部屋と同じように造ってしまいやすいのです。 設備の世界では、それを許しては来れません。ほんの少しの緩みでも、たちまち漏水となってしまいます。これを防ぐには、床をガッチリ造るか、もしくは水道管と便器を、動いてもいいようにつないでやるか、どちらかの方法をとります。木造住宅では、少し格好が悪いかもしれませんが、動いてもいいように、フレキシブル・ジョイントにしておいたほうが安全だ、と匠研究室は思っています。コンクリートや石造りの建物の中で、育てられてきた設備は、日本の木造住宅に馴染ませるには、少しばかり異なった配慮が、必要なようです。 今や、水が必要なところへ、水道管をひくのは簡単です。居間の片隅にホームバーを作ったら、そこにも水がきていると便利でしょう。また、茶室には水屋が必要でしょうから、そこにも水栓をつけます。外回りにも、水栓がある方が便利でしょう。今日では、何処にでも水栓をつけることができます。 鉄管の水道管を使うと、錆の心配があります。しばらく使わないでおくと、赤い水が出ますが、あれは水道管が錆びているわけです。最近では鉄管を使わずに、塩ビ管や、内部に塩ビを巻いたライニング鋼管を、使用することが多くなってきました。材料費は、25ミリの塩ビ管で175円/m、ライニング管で580円/mといったところでしょうか。工賃は同じです。 水道の料金は、道路ぎわに埋め込まれたメーターが計測しており、それを検針の人が読んでまわっています。2ヶ月分をまとめて、請求されるところが多いと思います。水道代は、それほど高額になることはありません。ガスや電気に比べたら、水道は安いものです。ところが、それが何万円にもなるようであれば、漏水していることを、疑ってみるべきです。 地上部分で、もれている水は、溢れてきますので、すぐ判りますが、地中での漏水にはなかなか気が付きません。しかも、急に水道料金が、跳ね上がるわけではなく、ほんとうに少しずつ、もれていくのですから、気が付きにくいものです。とりわけ、電車の線路に近い場所では、電気分解によって鉄管が錆びて、地中の水道管から、漏水する例は多いものです。 漏水を見つけるのは、すべての水栓を閉め、水の使用を完全に止めます。それでも水道のメーターが、動いているようなら漏水です。 出てきた水は、用が済んだら返してやらなければ、洪水になってしまいます。給水は圧力がかかっていますから、二階へでも何処へでも昇っていきますが、用済みの排水は自然法則にしたがって、高いところから低いところへと流れていきます。ですから、必ず水勾配をとってやらなければ、水は思った方へ流れてくれません。 給水や給湯では、蛇口という止水栓があって、それがいろいろとデザインされていますので、建築主の関心も集まっています。ところが、排水となると、用済みのものを捨てるだけですから、建築主の関心を、引き付けるものではありません。しかし、これが順調に排水されないと、大変なことになるのは、給水以上であることは、いうまでもないでしょう。 排水工事は排水管を、洗面器や、風呂桶につなぐことから始まります。排水管は、硬質塩化ビニールのものが、使われます。直径50、75、100で、長さ4メートルという規格サイズのものを、切ったり、つないだりして、家のなかに排水の経路をつくります。
管工事というのは、直線部分と曲がりの部分の曲物を、組み合わせて作るもので、直線の管を曲げて、作るわけではありません。ですから、<分岐>や<曲がり>が多い場合は、配管は左図のようになります。曲物(やくもの)は、<分岐=チーズ>と<曲がり=エルボ>しかありません。ですから何度も曲がると、配管は芸術的にクネクネと、曲がっていくことになり、非能率この上ありません。複雑な配管は、詰まりのもとです。単純な配管をするには、設計の時から、しっかりした配管計画を作っておくべきです。 排水系統は、通常二系統に分けて、計画します。まず、室内にある台所や、風呂などからの排水です。これは雑排水と呼んでいます。それともうひとつは、便所からの排水つまり汚水排水です。都市部で、公共下水道が完備してある地域なら、そんなに神経質に分ける必要もないのですが、敷地のなかの浄化槽で、汚水処理をするのであれば、この二つはまったく別の系統とします。と言うのは浄化槽は、一度に大量の水を処理できないからです。 雑排水のための管径は、50ミリを使用することが多く、一度に大量の水が排水される風呂は、75ミリを使用したほうがいいかもしれません。いずれも、しっかりと排水管を固定することが肝心で、それが緩いと排水時に音がしたり、排水時の振動が繰り返しかかるうちに、管のつなぎが外れたりという事故につながりかねません。一階の事故は地面に漏れるだけですので、たいした被害が発生しませんが、二階以上での事故は、大変な被害になってしまいます。
排水管には、管の内壁に汚物が付着してきます。洗面器や流しなどと、排水管と直結してしまうと、その匂いが室内にでてきますので、それを避けるためにトラップ(=罠)という装置を設けます。罠といっても、特別の仕掛があるわけではなく、左図のように排水管の一部を曲げて、そこに水を溜めてあるだけのことです。この水によって、匂いの上昇を止めるという仕掛です。使用される度に、いつも水は補給されますから、常にこの状態が保たれるわけです。ところが、しばらく使用しないでおくと、この水が蒸発してしまい、臭気が室内に立ちこめてしまいます。トラップの種類によっては、水の量が少なく、蒸発しやすいものがあります。この水のことを封水といいますが、これが切れても、ただ匂いが上がるだけで、実害はありません。もしこういう状態になったら、蛇口をひねって少し水をだせば、それは簡単に解決します。 封水が切れたのは、簡単に直ります。ところが、その家庭の生活習慣は変わらないために、一度切れると何度も切れやすくなって、何処か故障しているのではないか、と思われるようです。実害はないといっても、大変な臭気ですから、我慢できないことすらあります。封水量の大きなトラップにかえることを、考えるべきかも知れません。規模の大きい建物では、封水が圧力差によって切られやすいので、通気管というものを設けます。木造二階建て程度の規模でも、最近は設ける例がふえています。 排水管が外部に面するところ、つまり排水弁の中では、パイプの口が開いているだけですから、そこから鼠が進入して来ることがあります。そこで、鼠避けとして、排水管の先端に網をつけるのですが、これは簡単に取り外しができる必要があります。というのは、鼠は外部から進入しますが、反対に内部からは、様々なものが流れだしていきます。これがその網でつかえては困るわけです。しかし、外部からの鼠は阻止するけれど、内部からの汚物は流すというような都合のいいものはありません。ときどき人間が、掃除してやらなければ、ならないわけです。そのときに簡単に取り外しができないようでは、困るわけです。このための製品は、余り見かけません。金網を丸めて突っ込んでおくのが、あんがい実用的かもしれません。 汚水排水には、100ミリの管を使用すべきです。そして、便器の近くには掃除口を設ける必要があります。汚水は、便器からの排水ですから、その中には何が流れているかは、もうお判りでしょう。液体だけではなく、固形物を運んで欲しいのですから、一度に大量の水が、流れてくれなければ困ります。詳細な話は省略しますが、とにかく、汚水管は100ミリです。 汚水管の勾配は100分の1とします。1メートルで1センチ下がりです。勾配がのろいと、水が流れてくれません。かといって、早すぎると水だけ流れてしまい、汚物を運んでくれません。配管が長い距離にわたって、横引きとなる時は、とくに注意が必要です。というより、設計段階で長い横引きとならないように、配管経路を決めておくべきです。 そうした配慮をしても、排水管は詰まってしまうことがあります。昔と違って、塩ビ管を使えば配管の内壁は、滑らかになって、詰まりにくくなっていますが、それでも詰まらない、という保証はありません。そのために、配管の途中には、必ず掃除口をつけておきます。それがないと、後で大変なことになって、どうしても詰まりを取ることができず、壁を壊してみるなんてことにすら、なりかねません。 建物からでた汚水管は、地面の中を浄化槽へ向かいます。もちろんこの時も、勾配をとってやらなければ、なりません。道中が長いと、それを確保するのが困難となるときがしばしばあって、基本設計の悪さに音を上げたくなります。とりわけ、道路面との高低差がなかったり、いくらか敷地の方が低かったりすると、悲劇です。 明らかに敷地の方が低いときは、最初からポンプで揚水する覚悟でのぞみますが、ぎりぎりの時が困るわけです。ポンプは電源も必要ですし、故障するかもしれませんので、できるだけ使いたくないのです。故障に備えて、二台のポンプを自動交互運転にすることもありますが、それとても停電には駄目です。ポンプ排水は、何よりも大がかりな設備になってしまいます。このあたりは、敷地をうまく読む、つまり敷地に対して、うまく設計することで対処するとしか言えません。 汚水は、浄化槽が必要な地域でしたら、浄化槽を通してから、敷地外に排水することになります。匠研究室では、各家庭の敷地内に設置する、個別の浄化槽を高く評価しています。汚物を敷地の外へと流しだして、道路の下をえんえんと、終末処理場までもっていくより、敷地内で処理した方が、ずっと合理的だと思います。 今日の浄化槽は、大変よくできていて、汚水がここを通ると、本当にきれいになってくれます。自分たちの出したものは、可能な限り、自分で処理する姿勢は、安い税金という理念からも、肯定されると思います。しかし、口にいれるものには注意を払っても、出したものには無頓着な場合が多く、浄化槽の維持管理には、多くの人がわりと無神経です。 今日の浄化槽は高性能です。仕様どうりに使えば、大変優れた性能を示します。規定以上の人数で使用しないことと、一年に一度の定期点検さえやっていれば、浄化槽はしっかり働いてくれます。 給水つまり水道は、以前からありましたが、給湯、お湯を家の何処でも使用できるよになったのは、最近のことです。これは便利になりました。ユニットバスの普及と一緒になって、二階にも風呂が作れるようになりました。給湯設備の普及には、ボイラーの飛躍的な改良があります。かつてのボイラーはどれも大がかりで、しかも望んだだけのお湯を、瞬時に供給することは、できませんでした。今日用いられているボイラーは、次のように分けることができます。 1 集中式−大きなボイラーによって、集中的にお湯を作り、それを建物全体に配る方式です。 まず1からいきましょう。集中式は、昔からある方法で、大規模なホテルなどと同じ考え方です。これは、1ヶ所で管理できるために単純なのですが、ボイラーから遠くなると、温度が下がったり、なかなかお湯がでない、という問題をもっています。ホテルなどでは、それを防ぐために、循環式の配管をして、お湯を常に建物中に回しています。ですから何時でも何処でも、お湯がでるようになっています。しかし、これを一般の住宅でやるには、大がかりになってしまいます。 分散式というのは、この言葉があるわけではありませんが、集中式に対して、こう言ってみました。分散式は、最近のボイラーの改良によって、可能になった方法で、お湯を使う場所に、それぞれ小さなボイラーを設置する考え方です。厨房、洗面所、風呂などなどに、適応するボイラーを設置します。これは、何時でも何処でもお湯が使える、手軽な方式です。初期投資はかかるかも知れませんが、住宅ではこちらを薦めます。 2は、使うときに沸かすのか、事前に沸かして溜めておくのか、という違いです。瞬間式は、ガスを熱源とするものが多く、細いパイプの中に水を通して、そのパイプを加熱する方式です。かつては、細いパイプに水を通すため、水圧が充分にないと、着火しませんでした。また、大量のお湯を使う場合には、器具本体も大きくなってしまいました。 最近では、改良がすすみ、16号相当でも、せいぜいランドセル程度の大きさです。(1リットルの水を、1分間に1度上げる能力を1号という)そのうえ、蛇口を全開にしなくても、着火するようになりました。貯湯式は、80度くらいのお湯を溜めておき、使うときに水と混ぜて適温にして使用する方式です。 3の熱源は、便利さではガス、経済性では灯油、安全性では深夜電気、というところです。ガスは瞬間式、灯油と深夜電気は貯湯式と相性がいいようです。深夜電気は、夜の安い電気を使って、前の晩に一日分のお湯を、沸かしておこうというものです。ですから、溜めておくお湯の量は、どうしても大量になり、広めの場所が必要で、地価の高い都市部では、いささか不利です。 実際は、これらを組み合わせて、最適なボイラーを使うわけです。それをすべて検討するのは煩雑ですから、匠研究室のおすすめセットを、一例だけ検討してみます。ただし本論は、木造一戸建ての家を、前提にしていますので、アパートのような集合住宅の場合は、また少し違います。 匠研究室は、分散式を選びます。使いたいとき、何時でも何処でもお湯がでることに、設計の基礎をおきます。それは贅沢だ、風呂と台所だけでお湯が使えればいい、というのであっても、分散式を薦めます。つまり、ボイラーの近くでお湯を使うことは、もっとも効率がいいわけです。配管も楽ですし、何よりも蛇口をひねれば、すぐお湯がでます。分散式の場合は、建築の設計と、密接に関連していますが、ここでは建築の方は可能であるという前提で、話を進めていきます。 まず、風呂です。和式の場合は、シャワー付きの追い炊きができる風呂釜が、最良でしょう。現代人の生活時間帯は、個人によってさまざまで、入浴時間は決まっていません。それに対応できるための、追い炊き釜は不可欠でしょう。フルオートという機種を選べば、水張りから湯温の設定、湯量の維持まで手間知らずにやってくれます。 厨房は、5〜7号程度の瞬間湯沸器を、厨房の外壁につけます。厨房は、お湯の使い方が、断続的ですから、厨房専用のボイラーを設置したほうが、いいでしょう。しかし、それも小さな能力のもので、充分です。この時は、先止め式という機種を選べば、ボイラーが厨房内に見えることはありません。 洗面所は何時でも、迷うのですが、風呂のとなりにあれば、風呂釜から分岐しても、いいでしょう。しかし、二階の洗面所となると、少し話が違ってきます。この場合は、洗面台の下に、貯湯式の電気温水器を仕込んでいます。 よくでる話に、洗濯の時のお湯を、どうするかというのがあります。まず、洗濯機を何処におくかによって、話は違いますが、風呂の残り湯を洗濯に使うのであれば、それがくみ出せるところに、洗濯機をおかなければなりません。しかし、洗濯に残り湯を使うと、いったい幾らの節約になるのでしょう。やはり洗濯にも、給湯口を用意することを、薦めます。 ボイラーはこれで決まったとして、配管です。配管の材料は、かっては銅管が使われてきました。最近では、耐熱塩ビ管や、耐熱塩ビライニング鋼管も使います。お湯には鉄管だけは使えません。水のなかには、鉄の錆を止める細菌が生きていますが、お湯にするとそれが死んでしまいます。ですから、たちまちにして鉄管が錆びてしまいます。また、お湯の配管には、室内であっても、保温材を巻いておきたいものです。 最後に水栓金具です。ボイラーからでたお湯は、温度が高いのが普通です。それを適温にするには、混合水栓で水と混ぜてやるとは、給水のところで述べました。給湯のための水栓は、止めたり出したりだけではなく、温度の調節という働きも、なければ困ります。シャワー用のものは、自動温度調節器付きにすると、突然に熱湯がでてくる事故を防げます。また、風呂や、洗濯機用には、定量止水栓やストップ・バルブを使うと、溢れ出してしまうことがありません。 衛生設備とは、給水(湯)管が水栓などにつながり、水やお湯が空中にでてから、排水口に流れ込むまでの、あいだをつなぐ器具のことをいいます。1、大便器 2、小便器 3、洗面流し台 4、浴槽が、それです。浴槽をのぞいて、これらはほとんどが陶器製です。大便器は、洋式便器を使えば、大小兼用になりますが、和式の場合は、大用と小用が必要になります。和式便器を、途中から一段上げて使う、大小兼用の列車型というのもありますが、これを住宅で使用するには、いささか繊細さにかけます。やはり列車型は、公衆便所などが適しているにでしょう。
洋式便所は、最初、洗い落としといって、左図のようなが使われました。これは、排水設備工事のところで述べた、トラップの口を広げただけのものでした。そのために、封水面が小さくて、汚物が水中に直接落下せず、どうしても、乾いた陶器面に当たってしまいます。汚物のかけらがそこに残りやすく、匂いなどの問題がありました。 その後、封水面が広くなった、サイホン式という便器が普及してきました。これは、汚物が水面に落下するために、衛生面ではよくなりましたが、今度はオツリがくるというオマケが、時として発生します。そうはいっても、排泄時の姿勢としては、和式に比べて断然に楽なために、これからも洋式便器が、和式を駆逐していくでしょう。 便器のメーカーとしてはTOTOやINAが有名で、この二社で市場の過半を占有しています。ところが二社とも、洋式便器の新製品は、次々と開発しますが、和式便器はとんと忘れているようです。カタログを見ても、色とりどりに鮮やかなのは、洋式ばかりです。洋式なら、洗面器や浴槽とも色を揃えられますが、和式となると、選択の幅はぐっと狭くなってきます。それだけ市場での要求が、洋式に偏っている、ということなのでしょう。 洋式便器では、暖房便座と水栓式のお尻洗い器にも、ふれておきましょう。寒いときに暖かい便座というのは、ほっとします。とりわけ、柔らかい部分の肌をつけるのですから、冷たいのは嫌なものです。暖房便座は、日本人らしい繊細な発明だ、と感心します。これを使用するときは、コンセントが必要です。水洗式のお尻洗い器は、普及してまだ日が浅いために、その評価が定まっていませんが、慣れれば快適なものです。 洗い落とし式の便器は、大体60、000円くらいですが、サイホン式だと約100、000円で、それに、暖房便座とお尻洗い器を加えると、200、000円という金額になります。 |
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