|
|
ハードとしての確実な家作り:実践編 | ||||||||||
33.空調設備工事 空調設備工事というのは、空気を相手にするもの全般をさします。その中に、 があります。空調は、正確には空気調和設備といいます。これは、空気を相手にしますが、室内の空気を相手に考えるわけです。当たり前ではないか、と言われるかもしれませんが、閉ざされた空間であることが、空調の前提なのです。 空気は、どんな狭いところでも通り抜けてしまいます。また、気圧の差があると空気は移動します。ですから、空気を密閉された環境においてやらないと、空調の前提が成立しません。空気を包む箱を、作るのは建築ですから、建築との連携プレイがうまくいかないと、空調効率はひどく悪いものになってしまいます。最悪のときは、いくら機械をまわしても、何も効かないことすらあります。 今までは、空調といえば、機械を使って空気を温めたり、冷やしたりするものをさしました。もちろん、これも空調の一種です。しかし、建築と無関係、もしくは、建築設計が終わってから、空調設計をするのではなく、建築設計に、空調設計を同時に取り込んで、建築全体として、設計を進めていく考え方があります。小さいものでは、サンルームや、南側にだす深い庇などがそれです。サンルームと空調の関係は、想像してもらえると思いますが、庇と空調が関係あるのだろうかと、、疑問に思われるかもしれません。
左図を見てください。Aは冬、Bは夏です。寒い冬は暖かい太陽の光を、たくさん部屋の中に取り込みたいものです。Aでは太陽の光が、部屋の奥まで届いています。ところが、夏になると暑いですから、太陽の光は欲しくありません。Bをみると、太陽の光はまったく部屋に入っていません。夏の太陽は、高く上がりますので、この庇が、さえぎってくれています。もし、この庇がなかったら、どうなるでしょう。冬は問題ありませんが、夏は、点線のところまで、太陽が入ってしまいます。 これは、南の庇でした。では、どの方角に付けても、同じかと言うと、そうではありません。全ての方向の立証はしませんが、西側だけ考えてみます。西から太陽があたるのは、夕方だけです。冬の夕日は、夕焼けとなって、西からの太陽は美しいものです。西日を嫌うのは、夏です。夏の西日は、低い入射角で室内に入ってきますから、庇の下を通ってしまい、庇ではまったく防げません。
敷地の関係でどうしても、西向きにせざるを得ない建物があります。たとえば店舗です。西側に道路があると言った場合は、西日対策が不可欠です。店舗の場合は、西向きだからといって、道路面を壁にしてしまうわけにはいきません。そんなことをしたら、お客さんが入ってこなくなってしまいます。お客はいれたい、西日は遮りたいという二律背反を解決せねばなりません。そこで匠研究室では、左図のように壁をずっと下まで下ろして、普通の窓とは反対の位置に、採光のためのガラスブロックを積みました。 こうしたことも、実は空調の一種です。建築的な空調と、機械的な空調とでもいいましょうか。この二つが一緒になって、快適な室内を作るのです。しかし、建築的な空調は、立地などの条件によって、大きく左右されますので、一般的には語られません。しかも、建築的な空調は、定価商品を積み上げていくのでは、ありませんから、目に見えて金額をはじくことができません。今日のように、カタログから建築部品を選ぶ時代には、なかなか理解してもらえません。 建築的な空調はそこにあって当たり前、建築が存在するかぎりありますから、その働きが充分には、理解されません。そこにいくと、機械的な空調は、スイッチを切れば効かなくなって、その働きを簡単に確かめることができます。ですから、その有効性が理解されやすいのです。寒いときに、暖をとらせてくれる機械は、本当にありがたく感じます。 建築は、建物全体です。これは、どんなに強調しても、強調し過ぎということは、ありません。しかしながら、建築的な空間は、建築設計の中でしか、述べることはできません。ですから残念ですが、この本でも、機械的な空調についてだけ、述べていきます。 空調の話にはいる前に、全館空調か、各部屋の個別空調か、という問題を考えておきます。匠研究室では、住宅においては原則として、全館空調という考えをとりません。もちろん全館空調が快適であることは、誰でも知っています。しかし、全館空調で快適に暮らすためには、大変なお金がかかるものであることも、また知っています。その快適さと、維持費を秤にかけると、そこそこの快適さでいい、というのが匠研究室の方針です。ですから、これから述べるのは、すべて一部屋単位の空調についです。 暖房工事とは、と言うまでもなく、暖をとるための設備工事ですが、どのように暖をとるかとなると、二つの方法があります。 1.室内の空気を温めて、それで人体に暖かさを感じさせる方法 1が、多く施工されています。いわゆるストーブがこれに当たります。なにか熱源を作って、これで空気をあたためる暖房方法です。1では、ガスFFヒーター、灯油FFヒーター、この二者が、匠研究室のお薦めです。FFというのが、他のストーブと違うところで、屋外の空気を使って燃焼し、室内を暖房します。ですから、これは室内の空気を汚しません。10万から15万円と高価なストーブですが、金額だけの性能は充分にあります。これは壁面に小さな穴を開けて、外気を出し入れしますので、設置場所が固定されます。 FFヒーターとよく似た形をしたものに、ファンヒーターがあります。これは原理的にはFFヒーターと同じですが、室内の空気を使って燃焼させますから、ときどき換気が必要です。そのかわり3万〜6万円と安価です。また固定されていませんから、部屋から部屋にも移動できます。 雰囲気を楽しみたい、というのなら別ですが、上記以外のストーブは、もはや薦められません。古くからある、灯油、ガスなどのストーブは、燃焼効率が悪く、しかも危険です。電気ストーブは安全ですが、カロリー当たりの単価が高すぎます。 2の、輻射式は、床暖房のことです。床面に発熱体を仕込んで、暖房しようというわけです。これは、空気を温めませんから、わっと来る暖かさはありません。二つの欠点をのぞけば、理想的な暖房方法です。欠点の一つは、立ち上がりが遅いことです。スイッチを入れてから、30分くらいしないと、効いてきません。ですから、いつも家にいる人にはいいのですが、外から帰ってきてすぐ暖を、というわけにはいきません。それと設備費が高く、坪当たり45、000円くらいかかります。八畳の部屋で、70%の床面に敷きこめば充分ですから、 八畳×70%×45、000円=252、000円 という金額になってしまいます。やはりまだ高価な暖房方式です。しかし、快適さでは、床暖房にかなうものはありません。 床暖房には、電気式と温水式がありますが、温水式は、お湯という液体を家全体に配る、その発想自体が駄目なのです。どんなに安全そうに見えても、機械には完璧はありません。万が一、お湯が漏れた時を考えると、どうしても電気式になってしまいます。両者のあいだに、性能や価格の、決定的な開きがあるならいざ知らず、ほとんど変わらないのですから、電気式を薦めます。電気式の長所は、個別制御が簡単なこと、タイマーが組み込めることです。朝起きる30分前にタイマーをセットしておけば、快適に起床できます。 パネル式の暖房器具も捨てたものではありません。また、床に座って生活する人なら、ホット・カーペットが断然お奨めです。室内でも靴を履いて生活する人たちには、ホット・カーペットの良さは判らないでしょうが、これは優れものです。 つぎは冷房です。冷房は、空気を冷やす方式しかありません。熱源は、ガス、もしくは電気です。これからは、住宅でも、おおくは電気式の空冷ヒートポンプになるでしょう。冷房は室内器と室外機を別々に設置し、両者のあいだを12ミリほどのパイプでつなぎます。最近では一台の室外機に、何台かの室内機がついた空調機が流行です。室内機のすべてが同時に稼働することはない、という前提で設計されています。冷房は、いろいろな方式がなく、選択の余地がありません。部屋にあった能力の機種を、まさにカタログから選ぶだけの世界です。 3.換気設備&排気設備 換気と排気は、よく似ています。字のとおりだと、換気は空気を入れ替える、排気は排出するだけけ、という違いがあります。しかし、排気だけを続けることは不可能です。排気だけを続けていくと、室内はどんどん真空に近くなっていきます。すると、室外と室内で気圧さが生じて、その間に空気の流れがおきます。部屋は完全密封になっていませんから、内外が常に同じ気圧になろうとして、隙間から風つまり空気が入ってきます。反対に、吸気だけ続けても同じです。今度は、室内の気圧が上がって、外へ空気が逃げたがります。 室内の気圧を高くするのを正圧(+)、低くするのを負圧(−)といいます。正圧にすると、室内の空気は外へ逃げたがりますから、トイレを正圧にしてしまうと、トイレの空気つまり匂いをもった空気が、廊下に流れ出します。ですから、トイレの換気は、換気扇で外に吸い出して、トイレの中が負圧になるようにします。また、暖房を効かせてある部屋は、すきま風が入りやすく、これがまたとても寒く感じるものですから、暖かい空気を押し込んで、正圧にしてすきま風を防ぎます。 空調は建物全体の構造と、密接に絡んでおり、空調だけをとりだして述べることは、大変難しいものです。少し考えただけでも、壁の断熱、新鮮外気の取入れ、廊下など通路の処理、片寄りなく全体を空調するには、空気の流速の制御、結露防止、音の処理などたくさんあります。これらはすべて、建築設計と絡んできます。大きな建物になると、最近では、コンピュターを使って制御していますが、それでもなかなか期待どおりには、働いてくれないようです。 こうした現代技術の限界だけでなく、人の生きる理念の問題として、住宅には宇宙船内のように、完璧に人工的な空調をする必要があるか、という問題があります。自然と共に生きるのも、また住宅のあるべき姿だ、という声もあります。これは、そこに住む建築主の問題ですから、ここでは何とも断定できません。自分が建築主になったときに、設計者とともに、対処していく問題でしょう。 ガスは、熱源として使われますが、二種類あるのはご存知の通りです。それは、都市ガスとPLGです。カロリーの違いと、供給方法の違いをのぞけば、まったく同じに考えることができます。使い方はまったく同じです。しかし、同じ器具で都市ガスとPLGを使うことはできません。引っ越しをして、ガスの種類が違うところにいったら、器具は交換です。 東京地方では、東京ガスが独占的にガスの供給をしています。そして、ガス工事も東京ガスの独占です。電気は東京電力の独占的な供給でありながら、工事は各電気工事店が施工するのとくらべると、まったく違います。ガスにかんしては何をするにも、東京ガスに頼まなければなりません。 東京ガスは独占をいいことに、ガス工事の施工費を全額前払いしないと、工事に手をつけません。東京ガスの社員が見積もった金額から、1円も値引きすることなく、支払うことを要求されます。支払が完了するまでは、どんなに工期がきびしい現場でも、東京ガスはまったく動きません。そして、見積金額が多かったときは、工事終了後に返金するという、驚くべき商売を東京ガスはやっています。 LPGなると話はまったく違います。LPGは競争が激しいため、ガス工事は無料もしくはそれに近い例が多いのです。ガス工事をすれば、家ができあがってから、必ずガスを使います。それを見越して、工事は無料という例がほとんどです。これはLPGの利益率が非常にいいことによるとは思いますが、それよりなにより、LPGを売る業者の姿勢が、東京ガスとはまったく違います。 LPGの施工についても同じです。完成間近になって、現場が追い込み体制にはいって、夜遅くまで工事をすることがあります。建築従事者は、全員が建物を完成させて引き渡すことを、無前提的な了解事項としています。ですから、明らかに現場が竣工間近の時は、全員が総力をあげ遅くまで仕事をします。しかしそんな時でも、東京ガスの作業員たちは、5時になると終業時間がきたといって、仕事の途中で引き上げてしまうことすらあります。こうしたことは、LPGの施工者には考えられません。 こうした事情があるので、ガス製品は同じ製品なら東京ガスから買うことはしません。それがいつも腹立たしい思いをさせられている、町の零細工務店のささやかな抵抗です。しかし、東京ガスの供給範囲では、東京ガスに工事を依頼せざるをえません。もし、都市ガスを使わなければならないときは、相当早めに段取る必要があります。 都市ガスを使うにしろLPGにしろ、ガスは漏れると危険ですから、ガス漏れ警報器をつけたほうがいいでしょう。 |
|||||||||||
| 「タクミ ホームズ」も参照下さい | |||||||||||