ハードとしての確実な家作り:実践編 

3.基礎工事

 基礎工事からが、建物の完成後も残される恒久的な工事となります。ただ、基礎は建物が完成すると、見えなくなってしまう部分です。そのため、とかくおろそかにされてしまいがちでした。今までは、建物が完成してから後になって、基礎の欠陥による建物の損傷が表面化し、後悔することが多かったのです。しかし、建ち上がってしまうと、基礎の手直しはほとんど不可能です。また、可能だとしても、大変なお金がかかることから、最近では基礎にお金をかけた工事が一般化してきました。

 木造住宅と言えども、基礎に関しては、土と鉄とコンクリートの世界です。かつては、玉石を使った基礎もありましたが、現在はほぼ百パーセントが鉄筋コンクリート製です。工事の手順としては、仮設工事でだした<遣り方>に従って、土を掘っていきます。どのくらい掘るのかというと、設計図に示されたように、基礎が地中に納まる程度です。土を掘ることを<根伐り(ねぎり)>と言いますが、基礎はその大部分を地中に埋めますから、どうしても一度は土を掘ります。そして、当り前ですが、基礎工事が終わってから、出来上がった基礎を包むように、土を埋め戻します。

 建物にかかる力は、高い部分から低い部分へと伝えられて、最後は基礎から地中へと流れていきます。根切りをした底面、つまり基礎が地面と接する面を<床付け(とこづけ)>と呼びますが、この面が大切です。<床付け>面がゆるい地盤だと、後日家が傾いたりします。建物の全重量を、この面が受けますから、<床付け>面は良質な地盤でなくては困ります。木造住宅の荷量は、一階あたり約400s/uですから、関東ローム層、俗にいう赤土でしたら充分です。関東ロームは5 t/u以上の地耐力がありますから、木造住宅の<床付け>面としては、そのままで大丈夫です。しかし、盛土した地面や、泥地のような場合は、少し別の考え方(地盤改良=地業じぎょう)をしなければいけませんが、話が専門的になりますから、省略します。

 重機械ではなく、人力で丁寧に平にした<床付け>面に、3〜5センチ程度のコンクリートを流して、上面を平らにします。床付け面に直接施工するコンクリートを<捨てコン>と呼びます。そして、コンクリートが乾いたら、その上に<遣り方>に印した墨、つまり基礎の位置を正確に移していきます。この時には、基礎の中心から、ベースコンクリートの巾だけ広げた墨を打ちます。

 
鉄筋の配筋と基礎断面

 コンクリートは、砂と砂利とセメントを水でねったものです。はじめはドロドロしていますが、一日で固形となり、一週間もたつと非常に硬くなります。一度硬くなってしまうと、押しつぶされることには、とても強固に抵抗します。ところが、引っぱられたり、曲げられたりという力には、まったく意気地がありません。そこで、コンクリートの中に、鉄筋(直径9〜13ミリの鉄の棒)を入れておきますと、圧縮された時はコンクリート、引っぱられたときは鉄筋が、という具合いに分担して抵抗してくれます。そこで、鉄とコンクリートをミックスした、鉄筋コンクリートなるものが使用されるようになりました。

  ベースコンクリートが打たれる部分に型枠をたてますが、その前に鉄筋を入れます。鉄筋を決められた部分におくことを配筋と言い、鉄筋の組み方は、大変やっかいで、細かいことを言い出すときりがありません。特に、鉄筋コンクリートを主な構造とする建物は、大規模になることが多いため、配筋だけでゆうに一冊の本が書かれる程、詳細に決まっています。しかし、木造住宅の基礎ですと、建物の自重が小さいため、経験的な原則が確立されています。

 ベースコンクリートになる部分、立ち上がり部分ともに、太さ10ミリもしくは13ミリの鉄筋を使用し、その間隔は250〜300ミリ程度とします。まずベース部分に配筋したら、L字に曲げた鉄筋をベース部分の鉄筋に縛り、図のように自立させます。そして、立ち上がった鉄筋に横になる鉄筋を縛り付けます。この時に縛るのに使う針金を、結束線とよび、細くて柔らかい鉄線です。そして、組上がった鉄筋はコンクリート真ん中に来てくれなければ困りますから、ベース部の鉄筋の下にはピンコロとかキャラメルと呼ばれるスペーサーをかませます。そして、ベースコンクリートが流れ出さないように、両側の型枠をしっかりと固定します。

 
コンクリートの調合
 コンクリート調合比率は、水セメント比で表され、水/セメント=55%を目安とします。コンクリートの堅さは、水だけで調整してはいけません。

 鉄筋が組み上がれば、コンクリートの打設です。コンクリートは、水で練ったものですから、砂、砂利、セメントの調合が問題になります。水が多ければゆるく、水が少なければ硬練りとなるのは、お判り頂けると思います。硬練りであればあるほど、良いコンクリートなのですが、あまり硬すぎると、型枠に流れこんでくれません。そこで施工性との妥協点で、硬さを決めるわけです。目やすとしては、バケツにスリ切り一杯入れたコンクリートを、地面に「エイヤッ」とばかりにふせて、バケツをそっと外してみた時、バケツの形がなくなって小山になるくらいの硬さが良いようです。バケツを外したとき、だらしなく四方に流れてしまうようでは、やわらかすぎます。

 正確には、コンクリートの練りの硬さは、スランプという数字で表します。逆さにしたバケツの頂点から、小山になったコンクリートのてっぺんまでの数字が、硬さを示すスランプです。そのため、スランプは数字が小さいほど、硬練りであることを表します。通常、建築では15センチ、18センチ、21センチというスランプのコンクリートを使います。とりわけ住宅の基礎は、型枠も単純な形をしていますから、スランプ15程度の硬練りでも充分にいけます。

 まず、ベースコンクリートの部分にコンクリートを打ちます。そして、上面を平らにして放置します。一日すれば、コンクリートの上を歩けるようになりますから、次に立ち上がり部にコンクリートを打ちます。しかし、Bの部分はこのままではいけません。ドロドロとしたコンクリートを、せき止める型枠を設けなければ、コンクリートが打てません。そこで型枠を設けます。

 ベースコンクリートのうえに、型枠を設置する場所を墨します。それに従って、基礎巾の定規になる金物を打ちつけます。そしてそれにそって、型枠を固定します。鉄筋を中心にして、12〜15センチの巾で、型枠を通りよく設けます。くねくねとした型枠は困りものですが、最近は鉄の丸パイプで型枠を両側から押さえるため、きれいに一直線となるようです。そして、この型枠のあいだに、コンクリートを打ちます。コンクリートは型枠になじんで固まるため、型枠の施工は大切です。

 この型枠の施工に当たっては、必ずやっておかなければならないことがあります。それは基礎を横断する、給排水用のパイプ類の処理です。何処をパイプが横断するかは、設計図面に明記してありますから、予定される箇所にはスリーブなるものを入れます。すると、スリーブの所だけはコンクリートがまわらず、あとで楽々とパイプが通せるという具合いです。これをしておかないと、あとでコンクリートをはつると言うことになり、みっともないことおびただしい仕事になってしまいます。(排水パイプがとおるスリーブは、水が流れるように、勾配を考えて高さを違えて設置すること)

 プディングを型に流すのと違って、コンクリートは放っておいたら、型枠にピッタリと流れこんではくれません。放っておいても流れこんでしまうようでは、コンクリートが柔らかすぎで、良質なコンクリートではありません。コンクリートは、流すとは言わずに、打つものです。型枠の隅々までコンクリートが行き渡るように、竹の棒などで、丹念につついてやる作業がどうしても必要です。これをおこたると、型枠を外した時には、アバタやジャンカだらけの表面となり、手抜き歴然のコンクリートとなってしまいます。

 コンクリートに関しては、打設時の気温、時間、方法など、注意すべき点がたくさんあります。たとえば、水を混ぜるわけですから、余り寒いときには施工できません。外気が氷点下になると、コンクリートの中の水が凍ってしまい、固まりません。そのため、凍結の恐れのあるときは、不凍液を混ぜてからコンクリートを打設します。これ以外にも、完璧なコンクリートを打設するのは、非常に難しいものがあります。

 大規模な建築ならいざ知らず住宅の基礎でしたら、コンクリートの調合にはあまり気にすることはありません。とりわけ、最近では現場でコンクリートを練ることが少なくなりました。生コンと称する工場生産のコンクリートを使うことが多いため、コンクリートの品質は安定しています。ですから、生コンを使えば、あとは型枠の全体にコンクリートをきっちりと充填するつもりで、丁寧に施工するれば充分です。なお、生コンは0.5m3(立米:りゅうべい)単位で販売されており(¥12,000/m3くらいか)、電話一本で配達してくれます。そのときに、コンクリートの強度を指定します。住宅の基礎に使われるのは、180もしくは210s/uです。

 コンクリート打設一時間後には、アンカーボルトを埋め込みます。アンカーボルトは、基礎と土台とを継ぐもので、大変に重大な役割を持っています。簡単にぬけては困ります。充分な長さ(ボルト径の40倍以上)をコンクリートの中に埋め込みます。このアンカーボルトだけが、家のズレ止めと言っても良いくらいです。そして、コンクリートを打設してから、2〜3日ばかり放置してから型枠をはずし、土を埋め戻して、基礎工事は完了ということになります。

 基礎工事が完了したら、遣り方の墨を直ちに基礎に転記します。まず、基礎天端に墨を打つのですが、アンカーボルトが邪魔をして基礎の中止には墨がうてません。そこで、基礎中心からどちらかに30ミリばかり離れたところに、逃げ墨を打ちます。そして、高さに関しても遣り方の墨を転記しますが、基礎天端からいくらか下がったところに水平の墨を打ちます。これらの逃げ墨は、建物の内側に墨を打ったほうが良いでしょう。これが土台を据えるときの規準になります。この墨が打たれて、基礎工事は完全に完了です。

 床下換気のための換気口を設ける場合が多いのですが、匠研究室では換気口を特別仕様としています。一般には下図のようにしていますが、これは次の理由により匠研究室では不採用です。

 1.基礎の高さが切り欠かれ、実質有効高が半分しかなくなってしまう。
 2.部分的な換気口であるため、床全体の通気が期待できない。
 3.基礎と土台が密着しているため、土台の下面がいたみ易い。

 
根子に床下換気
 根子を入れた基礎は、役所の建築指導課でも知らないことがある。そのため、根子の効用をその度に説明しなければならない。

 そこで、匠研究室では基礎と土台の間に、根子(ねこ)と言う堅木製(ケヤキやクリ)の枕をはさみます。もちろん根子は、柱の真下に入れることは、言うまでもありません。この根子によって、家全体にわたって、土台を3センチばかり上げてしまいます。これで、床全体の通気が確保できます。そして、ネズミ除けのために、内側から土台と基礎を継いで金網をつけておきます。こうしておけば、土台は空気中にさらされているので腐りにくいし、万一根子が腐っても、根子を交換するのは非常にたやすい仕事です。本当を言うと、この根子方式は、古くからある方法です。時々、職人たちも知らないことがあり、匠研究室の新工法と誤解されたりもします。根子による床下換気方式は、何分にも手間がかかるため、最近ではほとんど見かけなくなりました。

 基礎は、土台がのる上の面を天端(てんば)と呼びますが、天端が水平にされている必要があります。この面が歪んでいると、家全体も狂ってしまいます。そこで、匠研究室では、基礎のコンクリートを打った時も、天端の水平を確認しますが、根子を並べた時にも、根子の上面が水平であるかどうか再度確認しています。(根子の厚さで調整する)

 コンクリートから木へと工事が移るにつれて、頭から大工へと工事の担当者は移っていきます。根子を据え付けるのは、大工の仕事です。根子の上面が水平であることを確認してから、土台を敷きます。土台は木ですから、もはや、頭の仕事の領分ではありません。別の場所で下ごしらえをしていた大工によって、現場に搬入されて、土台が基礎と結びつけられます。この時に、基礎のコンクリートに打たれていた墨が規準になる。

 木は湿気を嫌い、土に近い部分ほど腐りやすく、また、白蟻にやられ易いのはハッキリしています。土台は、腐りにくい材料、つまりヒバや桧の防腐処理をしてあるものを使用します。(土台に関しては、木工事の項で詳述します)土台が敷かれると、仮設工事として設置したおいた<遣り方>を撤去します。つまり、ここで<遣り方>に印されていた基準が、基礎そして土台に移されました。ですから、<遣り方>はもう不用です。

 ただし、これからも基準となる高さ(ベンチマーク)は、必要に応じて参照しますから、汚したり振動を与えたりしないように注意します。高さに関して問題になった時は、いつでもベンチマークから測り、工事が終わって、家が完成するまで、この基準点は大切にしておきます。

 
ベタ基礎断面、ベース・立ち上がり部分とも鉄筋が入るのは同じ

 今まで述べてきた基礎の形式を、布基礎と呼びます。最近までは、この布基礎が主流でした。しかし、今まで記したとおり、この布基礎は手間がかかります。そこで、労務費の高くなった昨今では、手間のかからないベタ基礎がふえてきました。ベタ基礎とはその名のとおり、家のした全体に、コンクリートを打設するもので、手間はかかりませんが、コンクリートの量をたくさん使います。労務費の高騰をうけて、今やコンクリートをたくさん使っても、ベタ基礎の方が総額では安くなってきました。そこで最近では、匠研究室でも、最近では、ベタ基礎を使う例がふえています。

 本来ですと、基礎が打ちあがってから、そのままの状態で1〜2ヶ月くらいは放置したものです。すると、雨などによって、その間に土と基礎がなじみ、地盤が安定します。ここで放置すれば、完成後、建物に狂いがでず、理想的な仕事ができます。しかし、何分にも忙しい昨今、ここで1ヶ月も2ヶ月も放っておくことは、できないのが普通です。建築主も、新しい家をはやく見たいとせかすし、施工者も早く完成させて、お金をもらいたいため、土台敷きの翌日はもう建方工事に入るなんてことも珍しくありません。この先20〜30年もその家に住むことを考えれば、ここでじっくり家作りをするのは良いことだとは思うのですが。

 基礎工事は次のように金額が算出されます。
 数量×単価=金額
堀削       ○○ m3×  1,200円/m3 = ○○ 円
地業       ○○ m3× 13,000円/m3 = ○○ 円
コンクリート   ○○ m3× 14,000円/m3 = ○○ 円
鉄筋       ○○ t × 160,000円/t = ○○ 円
型枠       ○○ m2×  5,000円/m2 = ○○ 円
埋戻し      ○○ m3×  2,500円/m3 = ○○ 円
コンクリート打ち込み等の手間
          ○○人工 ×23,000円/人工= ○○ 円
アンカーボルト ○○ 本× 60円/本 = ○○ 円

 この金額を合計すれば良いのですから、いくらかかるか正確に算出できます。一軒の家全体が鉄筋コンクリートで出来ている場合は、このコンクリート、鉄筋、型枠に関する項目は、総工事費の中でも大きな割合を占めます。ですから、金額も詳細に列記されます。また、設計事務所でも、コンクリートや型枠等の単価や数量の査定は、厳しく行なっています。設計事務所は、建築主が適正な金額以上に支払わないように、目を光らせています。設計事務所としては、設計監理を依頼されている以上、建築主に割高な建物を買わせることは、背任行為になりかねません。

 木造住宅の場合は、このコンクリート部分、つまり基礎工事に関しては、経験則から導きだした坪あたり何円という、概算計算式が使用されている例が多いようです。

 基礎工事一式
床面積○○坪×30,000円/坪=○○円
 もしくは、基礎を長さに換算して、
○○m×5、000円/m=○○円

と計上されているのをよく見かけます。匠研究室では、入念な基礎工事を要求しますから、この概算計算式で算出された金額では、不足することが予測されます。ですから、施工後追加請求がでないように、見積り段階で施工者と細部まで打ち合せをして、正確に金額を押さえておきます。

 精根こめて施工されたコンクリートは、密実に仕上がり、実に頼もしく見えます。これで、どんな建物が上に乗っても、しっかりとささえてくれます。縁の下の力持ちとは良く言ったものです。この基礎工事はどんな建築工法を採用しても、絶対に必要です。在来工法のみならず、ツーバイフォー、プレファブ住宅…どんな建物でも、土と建物を継ぐのは、基礎です。完成後、建物の下となって隠れてしまう基礎には、充分お金を投じて、頑丈で信頼できる工事をしておきたいものです。


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「タクミ ホームズ」も参照下さい