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ハードとしての確実な家作り:実践編 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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棟梁は、買った木材を自分の下小屋(したごや)、つまり加工場に搬入させます。その木材は、順次加工されていきますが、土台、柱、小屋とどこから順に、というきまりはありません。
設計図が棟梁のもとにあり、棟梁の頭の中には、家の構造が立体的に理解されています。家を立体的に理解できるか否かが、棟梁と単なる大工かの違い、と言っても過言ではありません。一度、立体的に理解されたものを、絵図板(えずいた、もしくは手板ともいう)に書き写します。これは、三尺方眼の図で、主として柱を印した平面図です。絵図板の特徴は、方眼に番付けという記号がついていることです。Aの柱は<はの二>と呼びます。また中間にくる柱は、<又>をつけて表します。たとえば、Bの柱は<ろ又三>というわけです。これによってすべての柱が、どこに建つのかが判るようになっています。 すべての番付けは、番頭<いの一>に面した方に書きます。こうしておけば、この柱はどこに建つかだけではなく、その柱がどちら向きかも判る仕組みです。また、柱を削って仕上げる場合は、番付けが削りおとされてしまうので、柱の根柄(ねほぞ)に転記しておきます。 次に、高さです。検棹(けんざお)もしくは尺杖(しゃくづえ)という物差しを作り、すべての高さ関係をそれに記入しておきます。尺杖は、歪いにくそうな素性の良い30ミリ角程度の材で作ります。角材ですから四面に記入でき、しかも、くるくるまわせば、各部分の高さ関係が一目で判ります。一軒の家の完成まで、尺杖をたよりに、加工のための印=墨をつけていきますから、高さに関しては、一本の尺杖がすべての物差しになります。 一軒の家のための尺杖は、この家専用です。棟梁はこの尺杖を保存しておき、後年、増改築の時はこの尺杖を使用します。ということは、この尺杖もこの家と同じ年月を経ているので、この家に使われた材木と同じように、延び縮みしているわけです。ですから、この尺杖はどんな物差しより、この家にとっては適しているわけです。 搬入された木材を上棟できるようにするには、<墨付け><刻み><仕上げ>と、三つの段階があります。 墨付けとは、何をどう加工するかの指示をすることです。それが、墨で印されるので、墨付けと呼ぶわけです。柱だけでも、坪平均3本は必要ですから、30坪の家なら90本ばかりの柱加工が必要です。一本一本、木のくせ、表面の美しさを見ながら、どこに使用すれば適材適所かを考えながら、墨付けをしていきます。柱の一方には壁がつくとすれば、壁の中に入ってしまう面は、多少のキズや節があってもかまいません。三方から見えれば、どこが一番よく見える見付きか、ここなら見返しになるから、目だたない等々と考えて墨付けをします。柱には、背割り(せわり。表面に割れをださないための加工)と言って、一方から芯までノコ目を入れてありますから、これが見えるところにでては困ります。 墨付けで最も注意をはらうのは、木のくせを読むことです。丸太を角材に製材したため、丸太のときと異なって、柱にクセが生まれています。丸太は木目の中心を材の中心に持っていますから、狂いません。しかし、製材の時、四面から少しずつ木をとり除いてしまうため、木目の中心が材の中心からはずれます。そこで、木の中のバランスがくずれ、一方にそりだします。もちろん、10尺(3メートル)の柱で何十ミリも反っては使いものになりませんが、ほとんど全ての材が、3メートルで1〜3ミリ程度は反っています。この反りを勘案して、柱の用材を適所に配しないと、上棟後になって、どうも困った現象がおきてしまいます。
Aの柱は、1や4の方向には壁があるので反りにくいのですが、もし、反ると困ります。というのは、1の方向へ反ると、鴨居がゆるくなって、鴨居と柱がすいてしまいます。その上、2の方へ反ったら、4の壁がくっついているだけで、止めようがありません。当然、4方向の壁と柱際は隙間があいてしまいます。最悪は、Bの柱が2や4方向へ反った時です。反対側には何もないので、手のうちようがありません。そこで、こうならないような材料選びをするわけです。 AB両方の柱とも、Aは3へ、Bは1の方へと反るような柱を選びます。全然反りのない柱は、ごくまれですから、同じくらいの反りの柱を向かい合わせるわけです。そして、上棟後になって鴨居を入れる時、点線のようになっている柱を、ジャッキで広げて平行にします。そして、鴨居をそれより0.5ミリほど長くして、柱の間にはめこみます。すると、ジャッキをはずしても、ABの柱はもとへ戻ろうと互いに押し合います。しかし、鴨居がじゃまして戻れず、柱は平行のまま保たれる仕組みです。しかも、両側から、鴨居は押されているので、鴨居と柱の間もピタリとついて、何時までも開くことがないという具合いです。 墨付けの時に、このような配慮をして柱を用材しておかないで、逆ぞりの柱が建てられると、上棟後にどう頑張っても、鴨居と柱をピタリとつけるのは不可能です。材を選ぶことは、見ばえだけの問題ではなく、家全体に狂いを生じさせない配慮です。木のクセを読んで、家全体の中でそれぞれ互いに押しあって、無駄な力が残らないように、墨付けは進めていきます。こうした事情で、実際に使う柱よりも、1〜2割ほど多くの柱材を用意します。 大工仕事の中でも、墨付けは地味な仕事ですが、最も大切な仕事だと断言できます。墨付けをする者だけが、家の全体像をつかんでおり、一度墨付けられた材は、刻みにまわされると、他の大工職人によって、自動的に加工されてしまいます。そこでは、この柱がどこに用材されているのかは、まったく勘案されません。ですから墨付けを間違えると、あとは間違ったまま仕事がすすんで、そのまま刻まれ、上棟の時まで発見されません。墨付けは立体としての家を頭に描きながら、線としての木材を配して、家を想像する頭脳労働です。当然、墨付けは棟梁の仕事でした。こうした事情があるので、想像力のない大工が、棟梁になれないで、一生職人で終わるのも仕方ないことでした。 きっちりと正確に製材された角材に墨を付けるのは、どうやってやればよいか、想像がつくと思います。長さにしても、直角にしても、平行にしても、比較的簡単です。しかし、丸太材に墨を付けるのは、少し工夫が必要です。丸太同士がからむとか、丸太材と角材がからむ部分などでは、完全な長さや高さの押えが、必要なことは言うを待ちません。曲がりくねった材に、正確な墨を印するのは意外と大変です。いい加減にやると、簡単に2〜3ミリは狂ってしまいます。
丸太に墨を付ける手順は、次のようにします。まず、木口Aの中心あたりをねらって、中心線を入れます。そして、その中心線にそわせて、まっすぐな棒を定規としてたてます。次に反対側の木口Bに、まっすぐな棒をやはり定規としてたてて、Aの定規をにらみます。ABの定規が重なり、一直線になったところがBの中心線です。そして、上下各々ABを結び、丸太の中に仮想の中心面が設定できます。この中心面を基礎に、切り墨や陸墨が印されていきます。 どんな場合でも、墨付けは必ずここから出発しました。そして、その墨に従って、木挽職人が大鋸で、はつり職人がチョウナやマサカリで、角材へと製材したものでした。ですから、昔の棟梁は丸太の素性を読む能力も必要でした。しかし、今日では、製材は製材所の仕事となり、棟梁も丸太材をあつかう必要が少なくなくなりました。そして、家が小さくなって、大物をあつかう機会も減ってきて、墨付けも角材にだけなされる昨今です。 墨付けが済んだ材は、<刻み>つまり加工にまわります。この刻みからが、いわゆる大工の大工らしい仕事になります。まず、印された墨に従って、穴を掘ります。現在では、穴堀り機がありますから、機械で掘ります。正方形の刃の中でドリルが回転している機械です。これで穴を掘っていきます。機械ですから、きっちりと正方形の穴があきます。墨付けは、想像力の頭脳労働だと言いましたが、これからは純粋肉体労働となります。6〜70本の穴堀りが、1人工の目やすでしょうか。 穴掘りは、大工一年生のあてがわれる仕事です。くる日もくる日も穴堀りの毎日、かがんでは柱を運び、ひっくり返して、中腰の連続、いささか腰の痛くなる日々です。 機械のなかった頃の、穴堀りをふり返ってみましょう。貫通穴の場合は、上から掘り始め、真中までいったらひっくり返して、反対側からまた掘ります。ゲンノウを持つ右手は、いつも肩よりあげており、必ず真上からゲンノウを降りおろします。(ゲンノウが垂直にノミに当たらないと穴がまがる)ノミは左手に持ち、刃先の位置決めと、くずのかき出しは、左手の役目です。くずをかき出すのは、握ったままのノミをスプーンのようにして、手前にしゃくりだします。 仕事に熱中してくると、くずをかき出す時に、勢い余って左足の外モモを切ることがあります。材に馬のりになって、穴堀りをすることは厳禁です。馬のりになって穴堀りをすると、万一の時、男の大工が、どういう惨状になるかは、皆様の想像にまかせます。昔の大工は、すぐ判ったそうです。左足の外モモにノミのキズがあったからです。 上と下から掘っても、穴の中がまっすぐになっているとは限りません。上から掘って、ひっくり返し、貫通させて穴の側面をきれいにさらいます。そして差金(さしがね)をあててみます。穴の中がまっすぐであれば、金はピタリとして動きません。ところが凸凹があると、差金は定まらず、再度さらいなおしです。こうして、墨どおりの正確な穴を掘るわけです。聞いた話ですが、上から掘った後、一度ひっくり返しただけで、上下寸分の狂いもなく貫通させる大工がいたそうです。これは、おそらく左手がたてるノミが、いつも垂直におちていたからでしょう。なかなかこうはいかず、たいてい二度三度とひっくり返して、穴の中を仕上げます。
墨のとおりに穴を掘れば良いのですが、これにも多少のきまりがあります。木の性質によることなので、いつもこれは配慮する必要があります。つまり、木は木目を持っており、木目に対して、平行方向と直角方向では全く異なった性質を示すことです。木は1方向へは簡単にさけてしまいますが、2方向へは頑強に抵抗します。そこで、1方向への無理な力は避け、2方向のなじみでピタリとさせる工夫をします。穴に入れる材は、指定寸法通りに加工します。そして、穴の方はAA′の墨は、はらってしまい、BB′の墨は残るように加工します。ですから堀りあがった後は、図のように墨が残ります。棟梁が指定した穴寸法より、天地で墨一本分だけ狭く、左右で墨一本分だけ広い穴が掘れています。これが穴堀りのコツです。こうしておくと、穴とそこへ入る材はピタリと無理なく納まり、力を加えて押し入れても、穴の方も充分頑張ってくれる次第です。穴に入る方を柄(ほぞ)というが、この工作は次の柄付けも参照してください。 穴堀りが終わると、次は柄付けです。柄とは柱の天地にあり、上は桁や梁、下は土台の穴に入ります。(下の柄は、とくに根柄とよぶ)大工は、ノコギリ一本で柄付けをします。ノコギリと言って、現在では電気式の丸ノコが全盛をきわめていますが、ここでも手ノコを使っての柄付けを考えてみます。電気式の機械は、手の道具の代用で、原則は昔のやり方にあります。手ノコが使えれば、丸ノコは簡単に使えます。
1の方から縦びきノコで挽すすみます。2のところまできたら、今度は横びきノコできり、斜線部を切りおとします。この時、必ず1、2の順にノコギリを入れます。逆の2、1ではありません。何故か。やはり、木目の性質によっています。1から挽はじめると、たとえ挽すぎても、木の繊維を余計に切断することはありません。ですから、2の墨を越えて多少挽きすぎても、強度は変わりません。そして、次に2を切れば、1で入れたノコ目で斜線部は自動的におちます。2が1を越えて切りすぎることはありません。 ところが、逆に2から先にノコギリを入れると、どうしても、1の手前でやめるか、もしくは1を越えて切りすぎてしまいます。手前でやめた場合は、1を切った後、再度、2を切るという二度手間です。切りすぎると、木の繊維を余計に切断してしまいますから、見かけ上は大きな柄でも、強度は切りすぎた細い首の部分で決ってしまいます。切りすぎれば当然強度は落ちるわけです。 うまい大工は、2を切る横引きノコは心持ち左にまがるように、目立てをしておきます。4寸(120ミリ)角の柱を切断して、墨半分くらいまがるのが理想です。何故か。大工には左利きはおらず、全員が右利きですから、大工と材料の位置関係は必ず材の長手が左に来る。(昔は左利きは強制的に直されたが、最近は左利きも許されるかも知れない)
ノコギリが左へまがると、図のように切断されます。このようにしておけば、柄が穴に入った時、○印のところが相手の材にピタリとついて、材と材のなじみが良いわけです。これを逆にしてしまうと、×印のところが接してしまい、ぐらぐらとして具合いが悪くて仕方ありません。こうした芸当は、ほんとうに微量のことです。しかし、各部にこうした配慮をしておくと、家が建ち上がり力がかかってきた時、木が死んで(=押されてつぶれること)材と材がピタリと接合され、ゆがまないことになります。 次に、ノミ隠しと呼ばれる方を落とします。1を3にするのですが、まずノコギリをABに入れるのは前と同じです。しかし、前には墨の上をそのまま切断しましたが、ここでは切りはじめは墨の内側を切ります。三分の一ぐらい切りすすんだあたりで墨の上、そして柄の根元では墨の外側を切ります。(点線のように切る)つまり、墨に対してななめに切るわけです。
その理由は、ギリギリ一杯の穴と柄では、建て方の時に大変苦労するからです。不安定な足場の上で、建て方をする職人にしてみれば、穴と柄は簡単に入ってもらいたいところです。しかし、ゆるくしてしまうと、建物が弱くなってしまいますから、柄をゆるく作ることはできません。そこで柄先の三分の一をゆるくし、根元を太くして、きつくなるように細工したわけです。半分くらいのぞいた柄はもうこれ以上は入りません。そこで、カケヤという大きな木づちでたたいて、無理やり押し込みます。木は鉄と違って柔らかいものですから、カケヤでたたいていくと、木が死んで少しずつ入っていきます。それでも入らない時は、柄に油をうすくつけて、すべりをよくして、無理やりたたきこみます。 これで材と材が、しっかりと組み合うようになりました。これだけきつく組み合わせますから、先に述べたように柄を巾方向に大きくしてしまうと、柄がクサビのように働き、材をさいてしまいます。ノミ隠しだけ強く当たるようにした理由が、納得されることと思います。二つの木を、柄と柄穴で接合するのは、非常にすぐれた、よく木の性質を知った方法です。これによって二つの部材が緊密に一体化し、しかも、木の柔軟性を保持しつづけています。これで、穴と柄がつき、柱の刻みは一応終わりです。 土台は、基礎の上に敷きならべられます。土台用材で、一般に定尺と呼ばれる規格物の長さは12尺(4メートル)です。ところが家の長さは4メートル以下なんてことはありませんから、4メートルの材を継ぎ足してやらなければなりません。これを<継手>(つぎて)を作ると言います。また、長さ方向だけではなく、直角方向にも材を配ってやらないと、四角い家はできませんから、材を直角に継ぎもします。こちらは<仕口>(しくち)と呼びます。 継手や仕口の作り方はいろいろあり、写真集すら出版されています。日本建築の隠された美しさなどと言って、誉めそやす人もおります。その精巧な技術は確かに、一見に値しますが、匠研究室では仕口や継手と言った部分の細工には、余り重きを置いてはいません。仕口や継手、特に継手は、どんなに精巧に作っても、力がかかれば必ず伸びてしまいます。ですから、むしろ、一軒の家全体の中で、力の配分を考えて、適切な仕口や継手が選択されているかどうかの方を、重点的に見ています。応々にして、複雑な仕口は材の断面欠損が大きく、強度的には弱くなってしまうことすらあります。
仕口や継手を刻んでしまうと、せっかく計って印した基準の墨が、切りおとされてしまうことがあります。すると、建て方の時になって、正確な寸法が判らなくなってしまいます。また、4メートルの材を4本も5本も継ぐと、全長ではどれくらいになるのか、そこでは誤差もでようというものです。そこで<尺返り>という墨が登場します。つまり、組み上がった相手材の基準線から、1尺(=30.3センチ)はなれた墨という意味です。そして、刻みや建て方の時は、その墨から1尺を計れば良いわけです。
ここまで済んで、下仕事は終わりました。いよいよ、大工の華、削りものです。ここでもう一度確認しておきますが、削り仕事つまりカンナがけは、あくまでも大工仕事の一部です。確かにカンナ使いは素人の手におえなく見えますが、本当に難しくまた大切なのは、墨付けだと断言しておきます。 カンナで仕上げるものは、まず何と言っても柱です。うすいカンナくずをだしてゆっくりと、カンナを引いている姿は、本当に気持ちの良いものです。最近では、大壁と呼ばれる柱の見えない壁が増えてきました。しかし、以前は、すべて真壁つまり柱は、壁から出っぱって見えました。壁は柱よりも薄く、柱と柱の間にぬりこめられていましたから、柱をきれいに仕上げなければなりませんでした。 では、どうやって削るか。カンナの使い方は、<大工道具の話>を読んでいただくとして、柱の削りについて述べてみます。一本の柱は、一本の丸太から製材されています。すると、木目は図のようになっているはずです。これをどちらから削るか。根元の方からか、末<ウラ>の方からか。答えは両方とも正解です。どちらでも良いというのではありません。
削る面に節がない場合は、ウラから削ります。逆に削ると、木目に逆らうことになり、むしり取ることになってしまいます。これを逆目と呼んでいますが、滑らかな削りができません。しかし、節があると話は別です。節は枝のあとです。樹は地面から天に向かってのびますが、枝も同じです。枝の根である節も、樹の中でも上向きになっています。それを、上から削ってしまうと、カンナの刃が固い節にくいこんでしまい、動かなくなってしまいます。そこで、節のある場合は、木目をむしりとるようになるのは覚悟して、根元から削ります。するともちろん、逆目がおきますが、カンナの調整を上手にして、何とか逆目をとめます。節にじゃまされて、削れないよりはましというわけです。 こう言ったからと言って、誤解しないで頂きたいのです。大工の仕事は微妙です。逆目と言えども、きちんと削ってあれば、手でなでたくらいでは判りません。平滑なことに違いはなく、昨今の素人には区別がつかないくらいの微妙な程度です。ちなみに、柱は自然に生えているように建てます。これを天地逆にすることは、逆柱と言って嫌い、強度が半分になると言われています。 日本の木造建築は、木の肌をも愛しました。私たちが、新しい家に入ると、つい柱をなでてみたくなったりするのも、日本人の習性とでも言うのでしょうか。そして、それが可能だったのは、カンナ削りによって、きわめて滑らかに仕上げられていたからです。ですから、節を云々したのは、単に目ざわりだという理由だけではありません。前述のように節がある柱は、どうしても削りが悪くる、という意味も含めての話でした。上手な大工によって仕上げられた柱面は、ほれぼれするくらいに美しく、近くへ寄ると自分の顔がうつるくらいに平滑です。木に顔がうつる、そんな馬鹿なと思われるかも知れませんが、このくらいは今の大工でもこなせる、本当の話です。
柱を削るときに、柱の面寸法を決めます。そして、この面もカンナで削って仕上げます。あとで述べる造作材の寸法と同様に、面寸法は部屋の雰囲気つくりに大いに関係があります。面が小さいと堅くきびしい表情になり、面が大きいとゆったり柔らかな表情になります。もちろん、太い柱には大きな面、細い柱には小さな面が適しています。(柱の太さの10分の1を原則とします。)しかし、面を大きくとると、鴨居(かもい)などの造作材を取り付ける仕事が難しくなるので、通常は1分(3ミリ)程度の面をとることが多いようです。
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| 「タクミ ホームズ」も参照下さい | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||