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ハードとしての確実な家作り:実践編 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
13.設備工事 その1 建築工事も、このあたりまで進んでくると、いろいろな設備工事が入ってきます。設備とは、電気や、ガス、水道のことをさし、正確には、電気設備工事であり、ガス設備工事ですが、それぞれの工事については、最後にまとめて述べます。ここでは、壁や天井裏に隠れてしまう部分と言うことで、設備一般について述べておきます。
壁や天井が仕上がってからでは、電気の配線や水道の隠ぺいは、できなくなってしまいます。天井裏、床下や壁の中に、配線や配管を隠すため、こうした設備工事を先行させるわけですが、鉄筋コンクリート造ですと、設備工事はいささか厄介なのですが、木造の場合は簡単です。しかし設備工事は、歴史が浅いため木とのなじみが悪く、また、大工も設備屋まかせにする例が多いので、注意深い配慮が必要です。 まず、電気です。着工する前に、電気は電気設備として、設計がなされています。つまり、どの部屋には、どんな電灯をつけて、どこにコンセントをつけるのが、適当かといったことは充分に検討されているはずです。最近では、電気を必要とするものが増えており、家の完成後、予期せぬ新製品の登場があったりして、あわてることがあります。将来のことにたいしては、ある程度予測できる範囲の中で、最大限と言うことを考えておけば充分だと思います。なぜなら、設備類は日進月歩ですし、総工事費には枠があり、設備にだけ特別にお金をかけるわけにはいかないからです。病院のように、新しい医療設備の有無が、その建物の重要な使命である場合はともかく、住宅にあっては設備が、その本質ではないと思うからです。 ホームセキュリティ設備が、最近は話題になっています。いまこれを住宅に取り入れることの是非を問われれば、匠研究室では否と応えます。と言うのは、こうした設備がないと、生活ができないかといえば、なくても生活はできるからです。住む器=住宅にとって、設備はいつもあれば便利だにすぎないもので、不可欠の必需品ではありません。つまり、匠研究室では、新しい設備はほどほどに、といいたいわけです。 一度施工の現場から、設計つまり着工前の状態に戻って考えてみます。電気設備は、照明とコンセントに大別されます。照明については、部屋の様子や外観の設計を進める途中で、それも含んで計画が立てられていたと思います。この部屋は、天井から吊る形式がいいか、間接照明がいいか、といった検討がなされていたはずです。また、容量はどのくらいか、100ワットが3灯か、60ワットが5灯か、スイッチはどうする。蛍スイッチか(スイッチの中に豆電球が内蔵されているので、暗くてもスイッチがどこにあるかわかる)、消し遅れスイッチか、三路スイッチ(二カ所で入り切りができる)か。こうしたことは、着工前に充分に検討すべきことでしょう。 コンセントの高さや位置も、検討の対象です。コンセントはタンスや、本棚のかげに隠れやすいので、多めにほしいとよく言われます。しかし、コンセントがタンスのかげに隠れてしまうのは、実は設計が不十分だったのではないでしょうか。新築なら、タンスなどの大きな家具は、納戸やタンス部屋に納まっているはずで、室内にないのが当り前です。また、たとえテレビや本箱などを部屋におくとしても、どこに配置するかはある程度予測はつきます。とすれば、コンセントの位置はおおむね設定できる、というべきでしょう。 次に、テレビやFMアンテナの配線も必要です。アンテナは、UHF、VHF、FM、衛星放送の四種類があります。また、受像器が何台もあれば、増幅器や分配器が必要です。こうした機器類は、すべて工場生産品で、定価がありますから、実に明確な工事費です。また、値引きにしても、定価の何パーセント引きとなって、はっきりと数字で抑えられます。
電気の配線は、外部配線と内部配線に大別されます。電柱の上を走っている電線は、東京電力など電力会社が管理しています。そこから、各家庭へと電気を分けるべく電線を出しますが、これもまだ電力会社の物です。この電線は、各家庭の外壁に取り付けられた積算電力計(ワットアワーメーター)までは、電力会社の管理で、それ以降が各家庭の領分です。ですからこれ以降の管理も当然、各家庭で行います。 電柱の上は、6、600Vなどという高い電圧の電気がはしっています。それが、宅内に入るときは使いやすい100Vか200Vにおとします。最近では、電気をたくさん使うようになったため、引き込みは200Vでなされることが多くなりました。メーターを経た電線は、次に分電盤に入ります。分電盤で、それぞれ使用される場所毎に分かれるわけで、分電盤はどこの家でも、簡単に点検できる場所に設置されているはずです。 家に入るにあたって、電線は何重にも設けられた障害物を越えます。万が一、漏電したり、また落雷にあっても、外部の状態が直接室内に波及しないように、いろいろな装置をはさんであります。そうした装置は、漏電遮断機であったりするのですが、それらは分電盤の中に一括されています。 分電盤からは、電気を使う場所毎に、ある量をまとめて送ります。室内配線には、1.6ミリの銅線を二本並べたネズミ色の、Fケーブル(=VVFと書かれている)と呼ばれる電線が使われます。コンセントなら7ケくらい、照明なら100ワット電球に換算して、15〜20ケくらいというところでしょうか。つまり、使用する場所の近くまでは、一本の電線(二芯)でいって、そこで木の枝のように分かれるわけです。こうした一まとまりを回路といい、30坪くらいの家でしたら、10〜15回路くらいになります。また、クーラーや電子レンジのように、大量に電気を食うものは、それだけの専用の単独回路とします。最近では、電気を大量に使う器具が多くなっていますので、回路はますます増える傾向にあります。 電気設計では、設計者と棟梁の違いが随分とでてきます。つまり、設計者の考える家と、棟梁の考える家が違うために、回路の設定の仕方が違うのです。設計者は、回路を充分に確保して、より快適な生活を実現すべく、家を設計します。どの部屋にも、クーラーをつけることができるようにと、単独回路を設ければ、それだけですぐ五回路くらいの増加になってしまいます。そのために、コンセントやスイッチの数が、どうしても多くなってしまいます。普通のコンセントの施工費は一つ当り3、000円くらいですが、単独回路だと8、000円くらいしますから、必然的に電気工事費は高額となっていきます。 それにたいして、棟梁の考える家は、そうは便利にしすぎることはない。人間は体を使わないと退化するから、設備類は必要最低限にあれば良い、という考えにもとずいています。ですから、設計者がコンセント三つと言うところも、二つでなんとかなるとなって、設備工事は少な目になっていきます。換言すると、設計者の家は近代的、棟梁の家は土着派、もしくはソフト派とハード派とでも言えるでしょうか。 もう少し本当のことを言うと、棟梁は全体の統括者であると言いながら、木工出身者であるため、どうも設備に暗い傾向があります。そのため、電気や水道は、各工事の全体金額だけを決めて、あとの詳細は電気屋や水道屋まかせと言う場合が、しばしばあります。そして、その工事費が絞り込んだ金額であるため、設備類は必要最低限となってしまう傾向になりやすいわけです。こうした棟梁の家は、何百年と続いてきた、木の家にたいする名残のあらわれとも、言えるでしょう。建築主と頭梁が直接に交渉する場合でも、平面図に記せば、頭梁はわからなくても、電気屋はわかります。ですから設備については、建築主が積極的になったほうが、いいかも知れません。 次に水です。電気は細い電線を、家中にはりめぐらすわけですが、水は家中ではなく、水廻りと呼ばれる部分に集中します。しかし、給水と排水の二系統を用意しなければならないために、大がかりな工事になります。また、給水については水圧の問題、排水については水を流すための水勾配の問題がついてまわります。 高台にたつ家と、低地にたつ家では、水圧がひどく違います。高台にたつ二階には水が上がらないことさえあります。特に、瞬間湯沸器、シャワー、サーモ式ミキシングバルブ(一度温度設定をすると、いつも同じ温度のお湯がでる)、フラシュバルブ式の便器(強い水圧で汚物を洗い流す便器)などは、水圧で作動させますので、充分な水圧がないと、動きません。また、排水のほうは勾配のとりかたが微妙で、あまり急にすると水だけ流れてしまって汚物を運ばないし、のろければ水も流れなくなってしまいます。 水には、音の問題も絡みます。給水にはカタカタという音、排水には流れの音と厄介なものです。給水の音のチェックは、素人には難しいのですが、排水の方は、簡単ですので注意すると良いでしょう。排水管に防音材を巻けば、ずいぶんとちがいますので、排水専用の場所に配管されてない限り、防音材を巻くべきでしょう。とりわけ、二階の便器からの排水音には、グラスウールを巻くなどして気を配るべきです。 いずれにせよ、配線、配管は、壁の中に隠れてしまいますので、壁を仕上げる前に施工しなくてはなりません。設備工事は今後も、いろいろな工事の合間をぬって、何度も小刻みに施工されます。そして、完成直前に、照明器具やら便器などの取り付けをして、使えるようになります。今の段階では、建築とのからみで、設備を述べるにとどめ、各種設備については、最後にまとめて述べるつもりです。 木工事も、その5までは、主として構造にかかわる部分でした。どんな家でも、構造はそんなにバリエーションがあるわけではありません。ところが、仕上げとなると、少し話が違います。 今日では、畳の部屋と化粧床、つまり洋間とどっちが多いかといえば、圧倒的に洋間の方が多いようです。和室と洋間では、木工事が相当に異なります。ですから、これ以降は、和室と洋間に分けて、述べていくことにします。 まず、畳敷きの和室です。和室の原則は、柱が室内に見えることです。そして、この柱を中心として、和室の造作は成り立っています。すべての材が柱に取り付いていきます。鴨居、長押、廻り縁、天井という順に、部材を取り付けていきます。そして、最後が敷居と畳寄せです。建具が入らずに壁になるところの鴨居は、付け鴨居と呼び、同じように敷居に相当するものは畳寄せといいます。敷居は、他の工事者がつまずいて傷つけるのをさけるため、最後に取り付けますが、鴨居と対になって建具を受けるため、ここではまず、敷居と鴨居を述べます。
木工事その3でも述べたとおり、鴨居、敷居ともに、柱の面内に入ります。つまり、敷居、鴨居はともに、柱の幅より狭いと言うことです。ところが、たいがいどちらかには畳が入るため、敷居は鴨居より幾らか幅が広く、右図のような関係になります。以上の理由によって、敷居や鴨居の幅は、柱の太さによって決定され、105の柱だと100くらい、120の柱だと115くらいということになります。構造材にくらべると、造作材の単価は高く、120の柱を使うと、たんに柱の値段の違いだけではなく、造作材へもはねっかえってきます。ですから、太い柱の建築は、お金がかかることになります。 幅はそれで決まるとして、厚さはどうなのでしょう。造作材の加工は、下ごしらえと呼びますが、木工事その3で述べていますので、省略します。ここでは、すでに下ごしらえの終わった材を、柱に取り付ける方法を述べます。 今日多く用いられているのは、鴨居のはじを鋸できっただけで、柱にどんづけにするゲンゾウとよばれる方法です。そして、固定は釘でします。そのとき、鴨居の切口は真平ではなく、少しえぐっておきます。(少しえぐった切断は、鋸だけでできる。)そうすると、柱と取り合う部分が、ピッタリとついてすくことがありません。もちろん、鴨居の切断面のどの部分が柱につこうとも、鴨居としての用途には、何の支障もありません。しかし、切断面の中心部がついてしまうと、外から見える周辺部は、すいてしまいます。すいてもなんの支障もありませんが、鴨居と柱がすいているのは格好悪いもので、ここ(胴付と呼ぶ)をぴったりとつけるのは、大工の腕の見せどころです。 ぶつきりどんつけの仕口をゲンゾウとよび、つまるところ釘だけで固定されています。ですから、これは安仕事の代表みたいに言われています。しかし、本来ゲンゾウ仕事は、用材に高い精度を要求されるため、難しいものです。それに対して、もう少し丁寧な仕口を大入れ(おおいれ)と呼びますが、最近では少なくなりました。
大入れは、自称名人クラスでは、圧倒的に上仕事とされています。それは、釘に頼らず、木と木だけを組み合わせて、固定できる細工のせいでしょう。まず、鴨居のどちらかの端を約1センチの厚さにきり、それを片方の柱におしあて、鉛筆か白ガキ(刃の短い小刀のようなもので、正確な仕事をするときに使う道具)で形を移します。そして、その印の15ミリほど内側に図のような印をつけ、それに従って柱に掘り込みをいれます。ここの深さは6〜7ミリです。反対側の柱にも同様に凹型の堀込みをつくります。こちらは2〜3ミリと半分くらいの深さにします。 そこに取り付ける鴨居の長さを、柱間より6〜7ミリばかり長く切断して、両端に凹型の加工をして、柱間に当てがいます。柱間より長いのですから、このままでは入りません。そこでまず深い凹型の方へ鴨居を押し込みます。完全に入ってしまうと、柱間と同じ長さになりますから、柱間に水平に納まります。次に、反対側の凹に鴨居を送り出してやります。すると、柱にはいっていた6〜7ミリが迫り出してきて、反対側の柱に2〜3ミリ入ります。しかし、元の柱にはまだ半分残っていますので、これで鴨居は落ちなくなって、固定できたというわけです。このままでは、何かの拍子に、戻ってしまうかも知れませんから、凹の上部にクサビをうちこんでおきます。すると、これでもう鴨居はどんなことをしても、外れないわけです。 大入れの良いところは、柱と鴨居が仕口となって絡んでいるために、それぞれの材の伸縮がお互いに規制しあって、安定した状態を維持できることです。ところが、柱を傷つけることは、最上の仕事と呼ぶには、いささか抵抗があります。そこでゲンゾウです。ゲンゾウは細工は単純だけれど、長い年月にわたって新築のときと同じ仕上がりを保つためには、用いる材は素性がよく、完全乾燥材であるという完璧さが要求されます。ですから、柱の乾燥による収縮の読み、鴨居の長さの縮みに対する配慮など、新築後の推移を読んで細工をするのなら、ゲンゾウが最上の仕事と言うことになります。
鴨居の次には、長押を取り付けます。長押は、だんだん廃れてきて、もはや日常語としても通用しなくなっています。鴨居や敷居が、柱と柱の間に取り付けられたのに対して、長押は鴨居のすぐ上に、柱より少し(3〜8ミリくらい)でっぱって、ちょうど部屋を一周するような形で取り付けられます。長押は、今日では、むしろ飾りです。部屋の格式を出すためとか、引き締めるためなど、主として八畳以上の広い部屋に使われます。 長押は、寸法によって、随分と印象が違い、背が低いと柔らかく、背が高いと重厚な感じに見えます。ですから、数寄屋造りや茶席など、柔らかい部屋では、長押は使わず、寺院など格式を重んじる部屋では、背の高い長押を使います。一般の住宅では、最近の傾向として、柔らかい雰囲気を好むようになってきていますので、それにつれて、長押の背は低くなってきています。場合によっては、つけないこともあります。つける場合、八畳の部屋で、長押プラス鴨居の背が、柱の太さより少し広いくらいでしょうか。また長押の面も、大きさによって印象をかえるものです。大きな面をとると柔らかく、小さな面をとると厳しく見えることは、柱と同じです。ただし、長押の場合は45度の角面(かどめん)だけでなく、まれに上り面(のぼりめん)といって60度くらいにとることもあります。このあたりの寸法ぎめは、その部屋の雰囲気造りの狙いによって決まります。
長押の取り付けです。柱の面より前に出して、部屋を一周しますから、ぐるぐるっと回って、最後には一工夫が必要となります。それは、Aの長押を矢印方向へ、少し逃がしておきます。そして、Bの長押を抑えてから、Aの長押を戻すという具合いにします。 長押と長押をぴったりと合わせるのは、難しい工作で、いつまでも透かずにきれいに納まっているのを見るとうれしくなります。普通は、右図のように工作してあります。日本建築では材の小口を見せないのが原則であるため、二材が取り合う場合は、45度づつに切断して、取り合います。(45度で取り合うことを、留=トメという)長押でも、見付(みつけ=一番よく見える面をいう、その反対の面を見返し=みかえしと言う)方向は、一本の線ですが、下端は45度に取り合います。ですから、見付と下端を同時につけるわけで、なかなかに腕のいる工作です。しかも、長押は人の目の高さに近いところにありますから、よく目だち、ゆるがせにはできません。 次には天井です。天井は、大工の仕事がそのままで仕上げとなる、最大の部分です。粗床といい壁といい、大工の仕事は最後には隠れてしまうのですが、天井だけは大工が仕上げたまま、住む人の目にふれます。そのため、工作方法より以前に、どんな天井にするかという形式やデザインの方が考えられなくてはなりません。平らな天井、片流れの天井、船底天井、段違いの駆け込み天井…いろいろありますが、多くは平らな天井でしょう。 形式は平だとしても、デザインはいろいろと可能です。最もオーソドックスな竿縁(さおぶち)天井、最近ではむしろこちらの方が多い敷目天井、これは別名、目透かし天井とも言われており、軽快な感じがします。他にもいろいろとその応用がありますが、この二つが大半です。この二者でも、竿縁の太さや、断面の形などをかえることによって、また天井板の幅や種類をかえることによって、天井の印象は随分と異なって見えます。 天井と壁の接する部分には、廻り縁をいれて縁を切ります。(違う仕上げのあいだに材をはさむことを、見切るという)廻り縁は、39×45くらいの材を使うことが多いようですが、これも雰囲気作りに影響があります。また重厚さをねらって、廻り縁を二段重ねにして回すことがあります。この場合、天井に近い方を、天井長押と呼ぶことがあります。 天井材の加工方法は、形式によって違いますから、ここでは省略して、天井の高さの決め方だけを述べておきます。天井の高さは、デザインと共に重要な要素で、天井の高さによって部屋の印象は大きく変わります。まず、広い部屋は天井を高くする必要があります。狭い部屋の場合は、あまり天井が高いと、穴の底にいるようで落ち着きません。そこで、コラムに記したような公式があります。
公式はあくまで目安で、部屋のしつらえによって調整します。高い天井は気持ちよいですが、暖房には不利です。低い天井は親しみがありますが、ちょっと窮屈です。匠研究室の経験によると、この公式より少し低めにした方が、どうもうまくいくようです。 天井高が三メートル近くなってくると、鴨居と天井のあいだが広くなりすぎて、間が抜けてしまいます。そのため、途中に蟻長押という材を入れることもあります。しかし、最近の住宅では、広い和室を作らなくなりましたから、蟻長押は見かけなくなりました。このときは、蟻長押と天井のあいだを蟻壁という。 最近の雑誌などで紹介される室内写真は、天井を高くしたものが多く、気持ちのよい吹抜けなどと詠っている場合すらあります。高い天井が好まれているようです。それは、写真では雰囲気そのものが伝わりにくいため、低い天井の良さが写真に載らないせいだと思います。日本の名建築と呼ばれるものに、低い天井が多いのは、覚えておいて良いと思います。一見して判る気持ちの良さではなくて、長く住んで身にしみる良さと言うのが、低い天井です。 畳の上に座る生活は、水平方向に広がる感覚を大切にしましたから、高い天井は騒がしく感じたのでしょう。ですから、一般に茶室や数寄屋建築では天井が低く、それによって暖かい雰囲気を演出しています。反対に高い天井は、格式をあげ、堅い雰囲気を作る働きをもつので、書院造りや寺院建築では高くします。 今までは、和室仕立ての造作を考えてきました。しかし、最近の家は、洋間が増えてきました。洋間といっても、土足で歩く外国式のものではなく、スリッパで歩く床、つまり、畳以外で仕上げられた床の部屋を洋間と呼んでいるのは周知のとおりです。洋間では、和室と造作がまるで違います。洋間には柱が見えません。ですから柱のない洋間では、造作材を柱に取り付けるわけにはいきません。 洋間の要は、壁です。全ての部材が壁を頼りとして、展開していきます。和室の出入り口が、柱と柱の間に建て込まれるのに対して、洋間では、壁を区切るように開口部がつきます。洋間の床は、化粧床と呼ぶことは以前に述べましたから、床は張られたものとして、話を進めていきます。 和室の建具は、上下の溝の中を走るため、床には敷居が必要でした。ところが、洋間の多くは扉ですから、扉は壁についた枠に蝶番で固定され、床にはなにもないのを原則とします。事実、西洋建築の扉の下にはなにもなく、廊下の床がそのまま部屋の床に、つづいています。そのため扉の下から、新聞が差しまれたりします。ところが、日本の洋間は、敷居の名残なのでしょう、靴ズリなる敷居の代わりのものを生み出しました。 靴ズリは、敷居の名残であると同時に、施工上の逃げでもありました。施工するほうからいうと、家の中の床を一つながりのままで、完全に平にするのは相当に難しいのです。そこで、各部屋毎に区切って、その部屋の中で完全な水平をとるように施工してきました。そうすると、一部屋の中では平だけれど、隣の部屋とは高さが違うということが発生します。その違いはどこにしわ寄せされて来るかというと、廊下の床と、部屋の床がぶつかるところ、つまり、扉の下です。もちろん違うといっても、その違いは1〜2ミリです。それでも、日本の建物が完璧な施工精度をめざしたため、ほんの少しの違いも、ゆるがせにはできませんでした。そこで、扉の下に、靴ズリなる水平材を一本はさみ、それによって、廊下と部屋のほんの少しの誤差を吸収したのでした。 和室の時は、出入り口の両側に柱がありましたが、洋間の場合は柱の代わりとして、枠を立てます。柱と柱の間に、鴨居を取り付けたのに対して、両側に立てた枠は、同じ断面のまま上部にも回ります。つまり、枠は天・左右と鳥居のような具合いにできています。そして、部品としてできあがった鳥居型の枠を、壁下地に固定します。枠の断面形はいろいろあります。最近では、全体に簡略化されてきています。そのために、扉が壁の中心になかったり、部屋の内外で枠の見かけ寸法が違ったりします。 和室の場合は、柱の垂直性は何度も確認してありますから、柱にならっていけば良かったのです。しかし、洋間の場合は、柱がありませんから、ならうものがありません。そのため、枠の直角と垂直は一つ一つ確認する必要があります。また枠の状態では、捻れ(ねじれ)が分かりにくいのですが、枠の捻れは困ります。平らな扉を建てこむと、枠の捻れは定規をあてたごとく、歴然と判ってしまいます。扉と枠の接するところが、どちら側か一方だけ、三角形にすいてしまうのです。 洋間では、出入口のみならず、窓も同じように考えます。窓は床に接していず、上がっていますから、扉と異なって、下枠も三方と同様に回ります。そして、そのなかに開き窓や、突き出し窓が、建て込まれます。最近ではアルミサッシの窓を使うことが多いため、引き違いのアルミサッシに額縁を回すだけという簡単な仕上げになっています。それで、室内からみると、15ミリくらいの細い木が、窓の廻りをかこむだけ、というあっさりした感じです。 枠の縦材と横材は。平面的に取り合いますから、両方を45度に切って納めます。これをトメというとは長押のところで述べましたが、匠研究室ではこのところにトメを使いません。木は図一五の矢印のように縮みますから、施工直後に切り口がぴったりとついていると、後日内側がすいてしまいます。完全乾燥材が入手しにくい昨今、すくのが明らかに予想されるので、トメにしないのです。角柄(つのがら)という納まりにして、縦の枠を勝たせています。 洋間では、椅子の生活が基本となるため、扉や窓の高さは、和室と同じでは低すぎます。しかし、全体の構造は簡単にはかえられないため、多くは窓の高さも、低いままです。また、扉はどっしりとした厚手のもののはずですが、日本の扉はフラッシュ戸を中心とした、薄手のものが多いようです。そのうえ、西洋の開口部は、枠と扉が一体となって制作されるので、遮蔽性が大変高いのですが、日本では枠は大工、扉は建具屋と別の職人がつくります。ですから、枠と建具の馴染みが悪く、どうも期待したほどの性能がでていないようです。 洋間は開口部以外の仕立ては、ひどくあっさりしています。床と壁の取り合うところに、幅木(はばき)という厚さ約5ミリ高さ5〜10センチ幅のものが入って見切りとし、天井と壁の境には廻り縁が入って見切りとします。洋間ではこれだけです。幅木や廻り縁は、床、壁、天井のはじの切口隠しです。ここになにもつけないと、床、壁、天井のはじをきちんと整えなければならず、大変な仕事になってしまいます。ですから、幅木や廻り縁も一種の逃げと言うこともできます。それでも、幅木の方は、電気掃除機の吸い込み口の当り止めという、効用があります。電気掃除機を使う昨今では、壁と床の境に何もない和室は、壁の畳際の傷みがひどいようです。 洋間にも、天井はあります。しかし、洋間の場合、天井はもっぱら実利を充すためだけにあり、天井自体が装飾性をおびることは、少ないようです。たいてい、平らな天井で、しかもクロスを張って仕上げることが多く、大工工事のままで仕上げとなることはまれです。クロスについては、内装工事で詳述します。 洋間は、木地のままで仕上げとすることは少なく、枠廻りをはじめとして、すべて塗装をかける方が多いようです。日本建築は、白木のまま、木肌を愛でることが最上とされていますから、大工たちも木肌をそのまま見せて、いかに美しく、しかも材と材をぴたりと接合するかに苦心しました。ところが、塗装してしまうとなると、木肌の仕上げや接合部は、それほど重要ではないということになってきました。そしてそれが、大工技術の低下を招く、一つの原因ともなっています。 和室における大工の技術は素晴らしく、こうした高い技術の蓄積が、洋間をつくらせても、軽々とこなせる礎でした。ところが木肌を見せない仕上げは、家全体の変質をまねき、それに連れて職人の分化を生んでいきます。つまり、柱などの骨組を大工がつくるからこそ、大工の棟梁が元請けになったわけで、柱が不用である洋間を中心とした家では、大工が元請けとなる必然性はどこにもありません。ツーバイフォーでは、大工はフレームワーカーと呼ばれて、単なる木部担当の労働者に過ぎなくなっています。 |
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| 「タクミ ホームズ」も参照下さい | ||||||||||||||||||||||||||||||||||