H邸の新築工事                
第 16 回   8月17日記  基礎工事−その2:頑丈な基礎に

基礎はどんなに頑丈でも良い
 

 均しコンクリートを打った基礎は、もはや土が見えない。土に墨で印を付けることはできないが、コンクリート面なら墨がのる。まず、遣り方(やりかた)に印した基準から、糸を張る。平行する遣り方の貫板に釘を仮打ちし、それに糸を引っ掛ける。何カ所か糸を掛け渡すと、糸が家の輪郭を示し始める。その糸から垂直に落ちた位置に、墨を印す。

 コンクリート上の墨にしたがって、立ち上がり部分の型枠をたてていく。そして、鉄筋もこの時に組んでいく。右の写真が、鉄筋を組んでいるところである。

 鉄筋は家の下全体にわたり、縦横の間隔を25センチで、上下2段に組む。鉄筋を組んでしまうと、その上を歩きにくくなるので、道板と呼ぶ歩道を仮設する。手前から左手に折れ曲がっているのが、道板である。

 基礎の厚さは25センチだが、(25センチの部分をベースと呼ぶ)単なる一枚板ではない。端部は下にも厚くして、上にも立ち上がりをつくる。このH邸では、端部につくる立ち上がりは、左の図のようになっている。ここの鉄筋は組み方もほかとは違うし、一番上だけは鉄筋の太さも変えてある。今回は10ミリ直径の鉄筋を使っているが、一番上だけは13ミリにしている。

 基礎の外周に見える青いものは、スタイロフォームといって断熱材である。基礎のコンクリートが土に接するところ、それから地上部分から熱が逃げないように、基礎工事の時に断熱材をたて込むのである。あとで断熱材を張るより、先にたて込んでしまった方がコンクリートとの密着が良い。

 この家の敷地は、北側が盛り土であった。しかも、北側境界には擁壁まである。そのため、北側だけはほかの端部とは違って、より深く基礎をたち下げている。そして、下のほうを逆T字形に広げて、接地面積を稼いでいる。ここまでしなくても良いかと思うが、基礎だけは頑丈に越したことはない。

 コンクリートを打つためには、鉄筋も型枠も工事が完了していなくてはならない。お盆休みに入る前、現場は必死で追い込みをかけている。今年の夏はとりわけ暑い。汗をかきながら、日に焼けながら、職人衆は黙々と仕事をしていく。

 最近の職人さんは、手抜きなどしない。少なくとも、匠研究室が付き合っている職人さんは、図面通りに仕事をしてくれる。それだけに納まりやすい図面を描かなければいけない。同じ効力なら、仕事がしやすいほうが良いに決まっている。工程はなるべく単純化すべきである。単純なほうが間違いも少ないし、工事費も安い。

 それにしても、解体した家の基礎とはまるで違う。基礎にたいする考え方が、まったく違うのだから当然と言えば当然である。しかし、何十年か後に、この家を解体する必要がでたときには、大いに手こずるだろう。これだけ鉄筋が入っていると、機械の助けを借りなければ簡単に毀すことができない。

 匠研究室も、8月14日からお盆の休みに入った。しばらく現場をあけるときは、より一層に整理整頓すべきなのだが、いまのところ現場のあと片付けは芳しくない。現場監督に言うのだが、監理者が手を出すわけにもいかず、頭が痛いところではある。

「タクミ ホームズ」も参照下さい
「建築への招待」へ戻る        次回に進む