H邸の新築工事                
第 26 回   12月10日記  近隣との付き合い−自己主張の民主主義

近隣との付き合い
 

 住むということは、地域のつきあいを引き受けることでもある。マンション住まいであれば、管理人さんが処理してくれることも、1戸建てに住んでいれば、自分で処理しなければならない。今回、H邸の工事の過程で、近隣の人たちとも接触をもった。しかし、ここの近隣者たちは大変な人たちだというのが、おおまかな印象である。

 土地の境界問題で、南隣のLさんや北隣のGさんとは、なかなか難しかった。また、西隣のLさんも、ころころ意見が変わる難しい人だった。6人の隣接者のなかで、普通の対応だと思えたのは、西南の隣接者ただ1人だけだった。今回の主人公、Zさんもよく理解できない人だった。Hさんの敷地に入る北側に居を構えるZさんは、すでに引退された高齢者である。

 HさんとZさんの敷地境界は、道路際がブロック塀で、5メートルほど入ると、下2段のみブロックで、その上はフェンスで仕切られている。我々工事関係者は、ブロック塀の所有者が誰であるか、当初は予測がつかなかった。愛想のいいZさんは、あたかも当然のごとく、ブロック塀は自分の所有であるかの対応をしていた。そのため、ブロック塀はZさんの所有つまり敷地境界は、ブロック塀のHさん側だとばかり思っていた。

 しかし、それは違った。測量のときに、Zさんから頂いた図面には、ブロック塀の中心が、敷地境界だと印されていた。つまりブロック塀は、敷地境界の上に立っており、HさんとZさんが半分ずつ所有する物だったのである。にもかかわらず、Zさんは平然として自分のものだ、という態度である。自分のものだと平然と言えば、自分のものになってしまう民主主義。近隣のつきあいとは、ほんとうに恐ろしいものだと思う。
14日(土)に撮影した

 12月になると、Zさんはブロック塀の上にあるネットフェンスに、塩ビの波板を張り始めた。それをWさん側から張るのなら、とやかくいう問題はない。ところが、ZさんはHさん側から張っている。右の写真は、すでに塩ビの波板が貼られた状態である。

 写真では分かりにくいが、右手前の薄茶の部分がブロックで、その奥の白い部分が塩ビの波板である。ZさんはHさんの敷地に無断で入り、どうどうと波板を取り付けている。これはブロック塀が、自分の所有であることを、無言のうちに主張するためだろうか。敷地境界上にたつものなら、塩ビを取り付けるにあたって、Hさんに一言あっても良いはずである。

 Zさんが敷地を買ったときには、すでにブロック塀があったと、ご本人のZさんがいうにもかかわらず、Zさんはブロック塀を自分のものだと信じて疑わない。しかも、ご自分の所有する図面には、境界線はブロックの芯であることが明示されている。屈託なく笑うZさんだが、悪意をもって既成事実を積み上げている。

 表面上では我々もにこにこしているが、決して仲良くしたくない人たちである。隣地の所有者たちと、敷地境界では緊張している。工事関係者は土地の所有者ではないので、なるべく波風を立てないように付き合ってきた。

 区役所に電話を入れたLさんのように、たった1本の電話で工事は大影響を受ける。建築関係者は、建築主の立場に立ちながらも、近所の人たちとも仲良くやっていかなければならない。しかし、ここのように、大変な人たちに囲まれていたら、毎日が胃の痛くなるような日々となる。

 Zさんは、とんでもない主張をしてきた。時間が無くなったので、この続きは次回に 
14日(土)と15日(日)には、この家のお披露目をします。

「タクミ ホームズ」も参照下さい
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