外断熱(外張断熱)工法               
 木造住宅の断熱方法は、壁内に断熱材を充填する充填断熱工法いわゆる内断熱工法と、柱の外側に断熱材を張りつける外張断熱工法とがある。内断熱といっても、室内側に断熱層を設けるのではなく、柱の厚みの部分にグラスウールなどの断熱材を施工する。また、外断熱と呼んでるものは、正確には外張断熱工法である。

 1980年に「省エネルギー基準」が制定され、グラスウールを中心とした断熱材の使用が本格化した。当時の基準は、現在の省エネ基準より緩く、柱間にグラスウール系断熱材を充填するい工法が用いられた。この充填断熱工法は外壁と内壁のあいだを断熱材で埋めるという、施工性の面からも実に効率のよい方法だった。
 内断熱(=充填断熱)
 外断熱(=外張断熱)

 しかし、北海道では新築から数年しか経過していない住宅の、基礎など構造部が腐るという事例が相次いだ。断熱性能を上げるために、璧内いっぱいに厚さ100ミリのグラスウール断熱材を入れたことが原因だった。壁の中に入った湿気が内部で結露し、グラスウールのしみこんで、木材を腐らせたのである。

 断熱材には、繊維質系のロックウールやグラスウール、セルローズファイバー、発泡プラスチック系のポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェーノールフォームなど実にさまぎまな種類がある。断熱材は快適な空間をつくるためにとても役立つ製品だ。しかし、使い方を誤ると建物の寿命を縮めてしまうことになりかねない。

 空気中に含むことのできる水蒸気の量は、温度によって変化する。高温になるほど多くの水蒸気を含むことができ、低温になるほどその量が減少する。同じ水蒸気量の空気でも温度が下がれば水蒸気として含むことができず、水滴という形になって現れる。断熱性能をあげたときに、問題になるのは壁内結露である。

 冬の暖房時、室内の水蒸気が内装材の継ぎ目やコンセントなどの隙間から壁の内部に進入する。そして、壁の外側の冷気にさらされると、壁内結露が発生する。こうして発生した水滴はグラスウールを湿らせ、断熱効果を減少させるとともに木部を腐らせてしまう。これが充填断熱工法の大きな欠点である。ところが、これまで本州で先ほどの北海道のような事態が起きなかったのはなぜだろうか。

 それは、本州地区で使われていた断熱材の厚みに理由があった。それまで使用されていた断熱材は厚さ50ミリ程度のものが多く、断熱材を充填してもまだ壁内に空隙ができていた。だから結露しても、乾くため柱や壁村を腐らせるまでには至らなかった。

 100ミリの断熱材を使い空隙がなくなれば、本州でも壁内結露が発生する可能性は高くなる。壁内結露を防ぐには、断熱材の室内側(天井、璧、床)に防湿気密シートをはって、水蒸気の進入を遮断する。次に断熱材の外側に通気層を設け、壁内の水蒸気の排除と雨水の進入などに備える。この2点を完璧に行えば充填断熱工法でも結露はおきない。

 配管やコンセントなど何工程もの璧内工事にたいして、完璧に防湿気密シートを張らなければならないのだが、室内側の防湿気密の施工はきわめて難しい。また、長年に渡って住宅の気密状態を維持することも難しいことである。もっと簡単に住宅の気密状態を維持する方法はないのか。そこで注目を集めだしたのが外張断熱工法である。

 外張断熱工法とは、木造軸組みの外側に断熱材を張る工法である。使用する断熱材は、押出スチレンフォームなどの板状プラスチック系断熱材で、工事は断熱材を外側から隙間なく張り、ジョイント部を気密テープなどで処理する。施工しやすく気密化が図りやすく、室内の水蒸気の流出はおこりにくい。水蒸気の流出があったとしても、断熱材が構造体の外側に位置するため、内部結露は発生しない。

 充填断熱工法が天井面で断熱するのに比べ、外張断熱工法は屋根面で断熱することが多い。これは夏期には、小屋裏からの塙射熱を軽減し、最上階の室温の上昇を抑える。高気密、高断熱の住宅を造るには、断熱材だけでなく建具、換気、暖房も重要な要素である。また、季節のよいときは自然の風通しも考えておきたい。

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