H邸の新築工事                
第 11 回   8月2日記  実施設計の継続−太陽光屋根への変更

設計は建物の完成まで続く
 
     
 この計画では、勾配の緩い瓦棒葺きという金属板の屋根を採用した。通常のトタンでは短い期間で錆びて、再塗装が必要になる。そこで、ステンレスを使っているのだが、屋根勾配は1寸勾配(10行って1上がる勾配のこと)と、きわめて緩い。その理由は、1階の屋根の頂上つまり棟を低く抑えたかったからである。
 
  太陽光発電に向かない勾配
 太陽光発電のパネルを載せた勾配

 屋根勾配が早いと棟が高くなり、2階の壁をふさぐ面積が広くなる。すると2階につく窓の位置も、その高さが制限されてくる。床の掃き出し窓だとか、肘掛けといった低い窓は、屋根が邪魔して設置不可能になる。そこで最も鈍い屋根が葺ける金属板を選んだのである。これによって、2階の窓は床から60センチの高さに押さえることができた。これなら、ベランダへの出入りも、辛うじて可能である。

 ところが、当初からHさんの希望だった、太陽光発電をするためには、屋根勾配が4.5寸(10行って4.5上がる勾配)は欲しい、とメーカーはいう。一時は、太陽光発電を見合わせるようだったが、やはり設置可能な屋根にしておきたい、とHさんはいう。そこで屋根の設計変更となった。

 幸いなことに、屋根勾配を変更しても、北側斜線制限には抵触しない。そこで、上図のような屋根から、下図のような屋根に、2階部分だけ変更した。この屋根面積で、80センチ×120センチのパネルが、24枚並べることができる。すると、3Kw/hの発電が可能になり、このくらいの広さの家なら、電気は充分にまかなえるようだ。

 屋根勾配が急になったことにより、屋根面積が増え、両妻側の壁面積も増えた。東生建設に急遽、変更の見積をだしてもらう。屋根勾配が急になると、屋根面にも足場が必要になる。屋根と平行に斜めの足場をかけないと、作業ができない。そうした目に見えないものも増えて、約25万円の追加になった。そのくらいの金額ならと、Hさんが承認されたので、2階屋根は正式に設計変更になった。

 今回の敷地は、廻りに家が密集しており、屋根はほとんど見えないので、外観の変更にそれほど気をつかわない。それでもこの変更は、見積金額に影響をあたるほど大きいもので、設計者としては途中での変更を歓迎はしない。しかし着工前であれば、設計変更すべきものは変更する。着工後の変更は、余程のことがないかぎりお断りするが、それでも性能や使い勝手が決定的に向上するものは、施工者は嫌がるがあえて設計変更もする。

「タクミ ホームズ」も参照下さい
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